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内容説明
飢餓と戦争の時代――。民衆を守るために大名がとった秘策とは? 民衆の視点から戦国大名の領国支配の実情に迫り、これまでにない「新しい戦国大名像」を描き出す。
戦国屈指の名君と呼ばれた北条三代・氏康。彼が領民を守るために行った秘策とは? 武田信玄や上杉謙信の小田原進攻、慢性化する飢餓……。郷村を維持するための対策として、検地を行い領国把握に努め、さまざまに重なる税と夫役の負担を整理。飢饉のときには、領民の生活に寄り添って目配りをすることで未曾有の危機を乗り越えたのである。はじめて民政を行い、領国経営を成し遂げた戦国大名の真像に、民衆の視点から迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roatsu
16
戦国時代と大名に目を向ける上で前提になる知識や考え方が得られ文庫サイズながら読み応え十分。比較的公正で安定した治世が知られる後北条氏の政策も、本書で説かれる村の成り立ちを始めとする困難な課題に直面し、領国経営のため懸命に考え抜いて実施されたものだと知れば大変感慨深い。まさに大名という事業継続のためのBCPと言え、粛々と対応した当主や幕僚達の知恵や胆力に敬服する。何を以て名君とするかの基準が見える。文中の民衆にとり権力は外在的に存在するものではなくむしろ生み出すものであるという洞察は核心をついていると思う。2018/01/12
YONDA
15
主に北条家(氏康時代)を例に、この時代の国家経営について書かれています。年貢と言っても種類は様々で、村単位で納めていた事が良くわかります。また、飢饉など災害のあったときには減免したり、逃散した百姓を戻すために減免したりと色々大変だったんだと同情してしまいます。戦時は派手で取り上げられやすいですが、平時の時こそ国主の力量が試されるのだと思います。しかし、北条家は初代宗瑞から氏綱、氏康と民百姓を大事にしていましたね。2017/12/10
nagoyan
11
優。本書は、2005年に吉川弘文館から同名で出版されたものに7編の増補を加え角川ソフィア文庫から再刊されたもの。話題は史料上の制約があり伊勢・北条氏に限定される。(滅んだ北条氏に関する文書がこれだけ残っているという事の方が奇跡的なのかも。)大名に対峙する存在は「村」である。「村」は民衆の生存の基盤。北条氏は「村の成り立ち」を図るために、領国危機の度に、税制改革、不服審査・訴訟制度を整備していった。また、武田、豊臣との対決では「御国」のためとして、新規負担の同意を引き出そうとした。一方的な支配ではなかった。2021/08/13
BIN
8
タイトル的に一般的なことが書かれているようにも見えるけど、黒田氏なので案の定、北条氏特に北条氏康の民政のことでした。上杉謙信が侵攻してきた頃なんかは連年のように飢饉が発生し、それに対する政治改革のことが書かれている。村が基本単位。民政のことが書かれることなんて、論文はともかく他書では見受けられないでしょう。違った視点で見れる点でよい一作。2018/08/10
getsuki
7
戦国北条家の民政に関する考察をまとめた一冊。自分の領地支配をいかに確立させるかに苦心している様子がうかがえる。思ったよりも村の人々がたくましく生きているのが記録から読み取れて興味深い。2018/01/30