岩波新書<br> 町を住みこなす - 超高齢社会の居場所づくり

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岩波新書
町を住みこなす - 超高齢社会の居場所づくり

  • 著者名:大月敏雄
  • 価格 ¥946(本体¥860)
  • 岩波書店(2017/11発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004316718

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内容説明

人口減少社会における居住は,個人にも,地域にも,社会にも今や大問題.「一家族一住宅一敷地」という考え方はもはや古い.住宅に求めるものは,長い人生のステージに合わせて,さまざまに変遷していくことに注目.町の多様性をいかに担保していけるか.居場所づくりのユニークな事例を多数紹介し,これからの住まいのあり方を考える.

目次

目  次
   はじめに
   住み熟す/ 「街」と「まち」と「町」/田舎町の多様性/多様性のある町へ
 第一章 時間──人生のスパンで住宅を考える
  1 町が住みこなせない
   ハウジングのはじまり/日本での公的ハウジング/住宅不足の半世紀/四二〇万戸の住宅不足/戦後の住宅政策/ニュータウン/アメリカの住宅地から/民間住宅地開発/国家主導のハウジング/量から質へ、経済へ/住宅双六
  2 町の生態学
   ニュータウンの「老い方」/高齢化する分譲系住宅/高齢化しにくい賃貸アパート/三五歳と生まれたて/アメリカで引越しが多いわけ/中古住宅が流通しない日本
  3 町の機能の多様化
   住宅用途から非住宅用途へ/住宅以外の用途も変わる/まちなみのルール/自縄自縛な用途規制/町の成長/嫌われる賃貸アパート/異種排除という課題
 第二章 家族──十家族十色の暮らし方
  1 住まい方は家族それぞれ
   家族と世帯は違うのか/文化によって異なる家族/戸建て住宅を超える集合住宅の住みこなし/大きな家族が住む団地/戸建て住宅団地の住みこなし/長屋門での住みこなし/済州島のアンゴリ、バッコリ
  2 近居の力
   近居とは/近居の実態/私の近居
  3 町の多様性が近居を可能にする
   オールド・ニュータウンで起きていること/空き家には誰が移り住むのか/多様性が町を救う/賃貸という多様性/ 「焼き畑農業的開発」を超えて
 第三章 引越し──「gターン」がつくる生活の薬箱
  1 住み替えとゆるい定住
   住み替えという想定/ 「かたい定住」と「ゆるい定住」/住宅地間の浸透現象/長い目で見ないと何が幸いするかはわからない/集合住宅内での住み替え/ゆるい定住と地域循環居住
  2 同じ町の中で移り住むこと──gターン
   時間差で開発された町/ujiターンとgターン
  3 町が「地元」になること
   住めば都/町は生活の薬箱/拠点化されて地元となる
 第四章 居場所──町のあちこちに主感のある場を
  1 仮設住宅から学ぶ
   阪神・淡路大震災から東日本大震災へ/孤独死はどう防げるのか/医・職・住を備えた仮設住宅/ケアゾーン/一般ゾーン/子育てゾーン/ガラパゴス化した災害救助法/人びとは団地のどこにいるのか
  2 遠くの親戚よりも近くの他人
   お茶っこ/家族資源・地域資源・制度資源/コミュニティ必要曲線/第一の青春/第二の青春/第三の青春/町にはいつでもコミュニティが必要である
  3 「町の居場所」はどこに?
   コインランドリー/眺め、眺められる町の居場所/ 「町の居場所」付き復興住宅案
 第五章 町を居場所にするために──居場所で住まいと町をつなぐ
  1 超高齢社会に求められる町とは
   地域包括ケアシステム/人は住宅にも住むが町にも住む
  2 時間──町をゆっくりと成長させる
   高齢化しない町/最大瞬間風速的利益確保という課題
  3 家族──多様な住宅を混ぜる
   多様な住宅タイプを混ぜる町の提案/多様な住宅タイプを混ぜた集合住宅
  4 引越し──町の住宅双六を
   戸建て団地と集合住宅をリンクさせる/町の中での住み替え計画/住情報をつないで町の住宅双六をつくる/町の住宅双六で住み替えのラインアップを/親世代と子世代の老後の引越し先を一緒に考える
  5 居場所──近隣に頼るきっかけの場づくり
   他人に迷惑をかけないことの是非/箒の先一つぶんの慮り/自然と部屋から引き出されてしまう高齢者の住まい/住まいを多様な居場所でつなぎ、町を入り会いにしていく
   あとがき
   主要引用・参考文献一覧
   図出典一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

59
「近居」という生活スタイルと、災害後の仮設住宅についての提言がメイン。お仕着せの住宅モデルがあっても、やがて住民は自らの暮らしをよりよくするために町を住みこなしていく。その流動性、多様性にこそこれからの生活のヒントがあるのだと思う。2017/08/03

壱萬弐仟縁

37
明日更新できないので、ここで。まちづくりは、民の立場、ただ漫然と消費者として日常生活を送っているのではなく、意識的に、能動的にまち課題を発見し、解いていく立場の人びとによって使われることが多い。1970年代に公害、日照権問題など日本の地域づくりの民主化運動が展開した際に一般化(ⅷ頁)。団地内での住み替え:Gターン=同一町丁目内での引越し(1984年開発、129頁図3-4)。広義のGターン=団地全体、近隣地域も含めたゆるい定住のための引越し(133頁)。 2017/12/09

雲をみるひと

30
住居の変遷を部屋の間取りや使い方、および住み替えや引越しを中心に論じたもの。どちらかと言えば設計的な観点と社会学的な観点から論じられており政策論が多い本テーマにおいてあまり見たことのない切り口で参考になった。作者の災害復興住宅などに対する提言は納得感がある。2021/09/20

モリー

14
著者は「町における多様性の獲得」とその延長としての「町の持続性の獲得」を説く。その鍵として先ずは、「近居」という現象が取り上げられる。「近居」とは、家族の構成員たちが、近くに住みながら、地域で離散的に暮らす事と定義される。例えば、子育て中の子供世帯の近所に親世帯が住むこと。そして、このプライベートな行為が町の多様性と持続性に貢献している事を明らかにする。また、「老若男女がどんな家族形態であるときにも住めるような、地域循環居住が可能な状況の中ではじめて、持続性をもって町が住みこなされ」ると説く。説得力有り。2018/07/15

kenitirokikuti

10
昭和の住居感っていうと、サザエさんの磯野家や、まる子宅、くれよんしんちゃんの野原家みたいな一戸建てが一つの典型だと思う。それが超高齢化社会との齟齬がどう深まっていったかが概観できる▲日本には中古住宅市場がないということが具体的にどういうことなのか、説明されている。転職と昇給がセットであり、それには転居も伴う、上物にも価値があるのだ。日本の住まいは価値がないので、古くなるとボロボロだ。住宅が相続税対策で建てられることが多く、ハウジングから程遠い。2017/10/17

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