内容説明
近未来英国、フリーカメラマンのティボー・タラントは、トルコで反政府ゲリラの襲撃に遭い、最愛の妻を失ってしまう。本国に送還されるタラントだが、それから彼の世界は次第に歪み始めていく……。現実と虚構のあわいを巧みに描きとる、著者の集大成的物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
50
SFが読みたい2017海外編第1位なので読んでみた。プリーストで読んだのは「夢幻諸島」だけなのだが、解説を読むと、プリーストの作品のモチーフが散りばめられているようだ。時間や空間があちこちに展開する夢幻世界。この取り止めのなさが、戦争の混乱というものかもしれない。2018/05/21
スターライト
23
プリースト作品をすべては読んでいないが、これまで読んできた氏の作品のモチーフがちりばめられていて、集大成的作品との評価はまさにその通りだと思った。タイトルの「隣接」というよりは「ズレ」といったほうがふさわしい各作品のつながりは、各パートがゆるやかにかさなっていく(もしくは異なった事態が待ち受けている)。さまざまなエピソードの積み重ねを経て、イスラム教国になった近未来のイギリスに戻ったタラントの物語で幕を開けたストーリーが、こう締めくくられる手際は見事。夢幻諸島の一つと思われる島の物語も不穏で良かった。2018/03/26
akira
21
まちライブラリー府立大本。 少々期待しすぎたか。あんまり苦言は書かない方だけど、この終わり方をするには冗長すぎる。 時折ある往年のSFを思わせる表現。もう少しこのあたりを掘り下げてくれたほうが楽しめたかな。少々残念。 「四枚目の写真だけ、老人はカメラに向かってほほ笑んでいた」2020/02/29
ゆう
21
時代もズレているパラレルワールドが重なり合っていて微妙に混じり合っている感じなのか。どこまで理解できてるか心許ないけれど、それぞれのエピソードが面白く、特に女性パイロットと整備士の話が切なくて良かった。過去の作品で使われた舞台がいたるところに顔を出していて、集大成的な意味合いがあるのかな。2019/11/24
もち
20
「まるで、境界線をはさんでどなりあっているようだった」◆正三角形の焼け野原に、彼女は奪われた――。妻を失ったカメラマンは、現実との繋がりをも損なった。別の時間で進む、大戦下での整備士の恋、異世界の奇跡師の物語。全ての次元が、隣接界で混ざり合う。■新兵器を巡る、ハード幻想SFとでも呼ぼうか。メインパートだけでなく、マジシャンやパイロットの語りが単品でも滅法面白い。そんな珠玉のドラマたちが、科学と夢幻の狭間で連なっていく、無類の美しさ。2019/10/21
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