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内容説明
死ぬと最初にたどり着くさびしい場所、それが「たそがれの市」。
自分が死んだと気付かない“大人のおいと”を見かけた少女のおきく。おきくはおいとにまとわりつく幽霊を遮り言う。「お前は元の場所に戻りな」と。神隠しとされていたおきくは、幼馴染のおいとと谷筋でもみ合ううちに――。たそがれの市でおきくの思いを知ったおいとは……(「第一話 紅の皿」)。ほか、病で先だった母が子を思う深い哀しみを描いた「第二話 涙池」や身分違いの恋と因縁を描いた「第三話 思い出」、津波に流されて命を落とした娘を探し求めて迎えにくる現代の家族との交流の物語「第四話 津波」など。
たそがれの市で、思いを残した死者と生者が交わるとき……生と死という壮大なテーマに向かい合った感動の全十一話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井月 奎(いづき けい)
36
生と死のあいだに漂っている人たちの物語です。年を経て、知恵がつき俗に染まった人たちが死に切るためにはこの市に住まい、人の行い振る舞いをよく見て感じて、自分を使い切らなくてはならないのです。存在が仏に近い子供はそうではありません。仏の大きな手にすくわれて仏の世に迎えられるのです。私にはこの漫画の描いていることが絵空ごとには思えません。この世への執着を捨てるのではなく、自らの心と向き合い生きることが生まれてきた甲斐だと思うのです。胸に清く冷たい水が流れ込むような物語、しみじみと心の滋養になるように思います。2019/07/10
かっぱ
36
半時間ほどで読了。河原に立つ市。商人たちは、みな古い着物を着ている。九つか十の時にこの市へとやってきた少女がひとり。ここは死者たちの市。ここへ来るのは同時代人ばかりではない。時には時空を超えて遥か未来からもやって来るものがある。作品世界の根底にあるのは仏教思想なのだろうか。いくつかの日本の昔話を聞き終えたような読後感。2018/09/10
天の川
23
人々が集まり、何かを交換する場であり、どこにも属さない場である「市」に興味があったと言われる近藤さん。死ぬと最初に辿り着く「たそがれの市」は、鎌倉時代の「一遍上人絵伝」に出てくる備前福岡の市のような光景だ。生者と死者の心が交錯する11の物語は、やはりどこか物悲しい。親が来るのを待っているおきくちゃんは、元気で明るく、そして健気だ。一番好きなのは「涙池」。幼子たちが笑い声をたてながら昇天する様子は切なく、けれど美しい。2017/11/25
多喜夢
9
死を題材にしながら、ほんのりとほっこりとする美しい物語。単純な絵や話の展開ながらも、行間につまる思いが身に迫ってくる。2018/03/28
kate
4
死者であるとつい忘れてしまいそうに主人公のおきくちゃんが元気で前向きで、不思議と心が明るくなります。 私も死んだらこんな場所に行くのかなあ、夫とまた会えるのかなあ。 どの話もなんども読み返しています。2018/03/13