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内容説明
巨大な成功を収めた本邦初の宇宙アニメ『宇宙戦艦ヤマト』。それは、ささやかなプロジェクトから始まった。クリエーターとして舞台設定を担当した著者は、新分野の開拓に賭ける熱気を回想しながら、作品創成の真実に迫っていきます。不評だった最初のテレビ放映が、なぜ甦ったのか。ストーリーはどう拡大し、変容していったのか……貴重な記録と証言で明かされる、大ヒット作誕生秘話!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
107
SF設定や舞台設定をしていた著者が考えた原案が、今の目で見ても練られていて面白い。しかしその原案通りにガチなSFアニメを作っていたとして、宇宙戦艦ヤマトほどヒットはしたかどうか。松本零士や他のクリエイターあっての成功なのだが、プロデューサー西崎義展のクリエイターを大事にしない姿勢が凄まじく、怒りを抑えて書いているだけ酷さがよけいに伝わる。報酬が少なく支払いが悪く、傲慢になっていく。なのに人たらしでもあるという矛盾。憤懣を吐きながらプロデューサーの資質は褒める複雑な著者の心境に、なんともいえない趣がある。2020/03/24
海猫
84
確認したいことがあって、ページを繰ったが内容が面白く、結果丸ごと一冊再読してしまった。前回は西崎義展プロデューサーの人間像に注目して読んだ印象。今回読んでみるとTVアニメの黎明期から、現場で参加してきた著者の証言の方が興味深かった。「宇宙戦艦ヤマト」に限らず、アニメ史の中でも貴重な記述がふんだんにある。アニメをやりたい、だけでなく良質なSFアニメにしようとする意志も好ましい。ただし、その姿勢ゆえに搾取されてしまうのは、残念なこと。ならばこそクリエイターの権利を守ってほしいという、訴えが響く一冊だった。2020/06/10
Willie the Wildcat
75
本格的なSFアニメへの夢に集結した強者。誕生までのエピソードは、良い意味で腹落ちし易い。印象的なのが、大阪万博。高炉と波動砲が、やはり頭に浮かんだ。現実世界との”整合性”にご苦労されたようですが、「ウラシマ効果」とか言葉も知らなかった。但し、沖田艦長の”復活”は、流石に無理があったなぁ。クレジット問題等の暗部は単なる醜聞だが、関連した悩みを吹き飛ばした裏番組ハイジの件に思わず笑う。それにしても、やはり虫プロは人材の宝庫だなぁ。因みに、『勇者ライディーン』が、超合金のMy Bestでしたね。2019/03/13
goro@80.7
65
朧気には分かってたつもりですが当事者からの証言は重いですね。強欲さのお蔭で出会えて強欲さのお蔭でバラバラになってしまったとしても永遠に生きるアニメ。再放送時に興奮して観ていたのは遠い昔で思えば遠くに来たもんだなぁ~。2023/04/17
パトラッシュ
40
アニメの金字塔「宇宙戦艦ヤマト」だが、その裏ではプロデューサーの西崎義展氏と松本零士氏らクリエイターとの暗闘が当時から報じられてきた。その一部始終を制作に関わった豊田氏が明らかにした本書では西崎という異才異能と仕事をした日々への喜びと怒り、楽しみと後悔に満ちた強烈な記憶が語られる。これと同じものを佐野眞一著「巨怪伝」で読んだ。プロ野球の父、テレビ放送の父、原子力の父とされる正力松太郎が歴史に残る大仕事を成し遂げながら名誉を独占した経緯とそっくりだ。「人の心をつかむ天才」とは西崎の墓碑銘にふさわしいだろう。2019/08/29