内容説明
会社社長の尾形信吾は、「山の音」を聞いて以来、死への恐怖に憑りつかれていた――。日本の家の閉塞感と老人の老い、そして死への恐怖を描く。戦後文学の最高峰に位する名作。
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※本作品は電子書籍化にあたり、紙本に含まれていた次の要素を削除しております。
〈解説「川端康成──人と文学 長谷川 泉」「作品解説 瀬沼 茂樹」〉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
156
「自分は誰のしあわせにも役立たなかった」息子と娘がいて、息子夫婦と同居。妻も健在で会社も経営、孫がふたり。なのに晩年にしみじみと感じる思いがそれなんて。息子の嫁より若い、見知らぬ娼婦と眠る幸福になごみ、幸福はこのようにつかの間ではかないものかもしれないとぼんやり思う。なんてもの寂しい晩年だろう。 実の息子と娘、孫が全員すごく嫌な感じで、息子の嫁の菊子だけが愛らしく哀れ。主人公は六十過ぎても女性を顔面の美醜で測っているように思え誰にも共感できない。一帯に戦争の荒んだ余韻も感じさせる、なんとも絶望的な小説。2018/08/25
yomineko@鬼畜ヴィタリにゃん
69
読み友様からのご紹介本です📚川端康成先生の勿論古い小説ですが現代にも通じる様な場面もあり、読みやすかったです。2023/03/20
佐島楓
68
優れた文学作品に共通することとして、再読のたびに発見があることと、多様な読み方ができるという点があると思う。川端作品だから当然、というのはなくても、両方の条件を満たしている。今回は菊子が実はかなりしたたかな女性なのではないかと思った。自分の肉体を犠牲にしながらも、生きる道を模索しているように見えた。2018/07/27
HANA
56
初老の主人公と、その家族を描いた物語。文章の美しさにまずは魅せられるが、欝々とした主人公の内面をずっと見せらるのには閉口した。「家」の崩壊とそれを暗示するかのような山の音という事だが、その家を作り出す家族が共感できるような人間が一人もおらず崩壊もむべなるかなという気分になった。『雪国』や『古都』とかだと時代を隔てた価値観の中にも美的なものを見出せたけど、本作だとそれが概ね不快に感じる。戦後という時代も原因だろうけど、登場人物の身勝手さが鼻につくのかなあ。著者の本の今までと違う読後感に混乱することしきり。2018/04/08
井月 奎(いづき けい)
48
美しい稜線の山、その山が内包する力は不気味に山鳴りとしてあらわれるのです。初老の主人公が無自覚に恋慕するのは息子の嫁と、伴侶の早世した姉の二人。無自覚であるからこそ、その思いが胸に浮かび上がると自らが狼狽する。伴侶に反省がなく、淡々と過ごすことが救いであるという悲しさ。大戦に従事した息子はその戦によって深く心に傷を負っている。それを彼はかすかに自覚しているが、傷だとは他者に思わせない、自らも封印している風である。その嫁が気づく伴侶への不気味。静かで狂気までいたらぬ不穏な心がうごめく物語はたしかに傑作です。2023/01/22
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