内容説明
日本近世社会の根本概念を疑う。
中世から近世への社会転換を示す重要要素とされる「兵農分離」。いま、この概念の存在自体が揺らいでいる。時代の変化はどのように訪れるのか。最新の研究成果から実態に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
26
結論を一般化して言えば、社会は政治家によってすべてが設計されるのではなく、人々の営みが形作っていく部分もまた大きい、ということである。英雄や悪者から社会像を語るのも一つのあり方ではあるが、彼らを万能の存在として描いてしまっては、現在の我々が社会を構成しているという意識すら薄くなってしまいかねない。/日本史の重要ターム(素養の無い自分にはその意識も希薄だった。残念。)である「兵農分離」をこの観点でとらえ直した本。/現代語訳、簡潔な図表、現代的な比喩と門外漢でもついていける内容でした。80年生まれの方。若い!2017/12/05
サトシ@朝練ファイト
22
メモ 士農工商という言葉は紀元前の中国で使われており、江戸時代にはそうした職に就いている人たちの総称であり、身分の序列を表したものではなかった2017/12/17
さとうしん
19
兵農分離について、兵農分離をすれば本当に軍隊は強くなるのか?兵農分離以前は百姓が戦争に動員されていたのか?武士と百姓の間の身分の移動を禁じ、双方の居住区の分離を定める政策が行われたのか?等々様々な観点から史料を検討し、兵農分離の状態は複数の要因による結果として生じたものであって、それを目指す政策はなかったという結論を導き出す。本書の中身もさることながら、歴史学的な議論や研究へのアプローチのしかたを学ぶために読まれるべき本。2017/11/06
スー
19
兵農分離とは?農民兵から職業軍人になったと簡単に考えていました。しかし、この本で戦闘員と非戦闘員、階級、城下町と村住む場所の違いとある事を知りました。分かった事は戦国時代から農民と戦闘員は分かれていた。戦闘員は村で生活していて戦になると出かける。農民は基本荷物運びに駆り出されるだけで戦闘は領地に攻めこまれた時など。兵農分離を推進した政策は行われていない。結果的にそういう流れになった。刀狩りは文字通り刀と脇差しが主な対象で武士とその他を明確に分ける事が目的だった。鉄砲は城に有るより村の方が多く持っていた。2017/10/23
Toska
18
再読。最近読んだ本に、明治政府は徴兵制の導入を「兵農合一」と表現していたという面白い記述があったので、兵農分離についてももう一度振り返ってみる気になった。結局、律令期の国民皆兵を理想視した明治政府も、「信長の軍隊は兵農分離のおかげで強かった」と思い込みがちな現代の我々も、過去に対する特定のイメージに囚われてしまっていたということなのか。2023/06/23