内容説明
歴史を紐解きながら万博の本質と課題に迫る。
19世紀半ばにロンドンで生まれ、近代化を競う欧米列強が推進した「万国博覧会」は、世界最大の国際イベント・最強のコミュニケーションメディアとして国際社会に君臨してきました。万博は日本がもっとも注力してきたイベントでもあり、1970年の大阪万博は戦後日本の一大エポックとしていまも日本人の記憶に深く刻まれています。しかし社会環境の変化と制度疲労が重なる状況下にあって、これまでなんとか持ちこたえてきた万博も、いまはかつての輝きを失い、歴史的な岐路に立っています。このまま老衰を迎えてしまうのか、あるいは再生を果たすのか。その命運はまもなく決するでしょう。
万博という史上初の国際イベントがなぜ、どのようにして生まれ、どんな役割を担ったのか。
その後どのように発展し、どのような問題に直面し、どのように乗り越えてきたのか。
そしていま、いかなる事態に直面しているのか。こうした問題について通史的に読み解きながら、現状の問題と課題をさぐり、今後の展望と可能性を考えます。
それはそのまま「大阪万博がなぜあれほどの強度を持ち得たのか」に対する回答にもなっています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あじ
50
万博は165年に渡り、大胆な未来予想図を描いて来ました。しかし近年タイムラグというものが失われつつあります(開催前に実現してしまうことも)。これまでの理念では通用しない世界が、待ち受けているのです。万博だからこそ担える役割を、見定めなければならない。過渡期を迎えた万博の栄枯盛衰を丹念に検証しながら、未来を探っていく有益な書です。四方山話も満載で、メモを取る手が止まりませんでした。2017/02/02
大阪魂
14
大阪でもう一度万博を!って盛り上がってきてるんで、そもそも万博ってなんやろっておもて読んだ本。万博の本質は近未来を体感できること。でも今の情報社会ではワクワクできなくなってしもてるゆうのが問題意識。万博再興には、とにかく、若い人がいまの感性でワクワクできる空間をつくること、その場にいったら情報を生でシェアできる空間をつくること。その鍵がアート!なんやそう。たしかに若冲展も21世紀美術館もそこでワクワクしながら語れるところやもんなあ。でも70年万博ってほんますごかったんやねー!また太陽の塔、見にいってこよ2017/01/14
ありんこ
4
万博の歴史を知り、勉強になりました。大阪万博と言えば、太陽の塔のイメージしかないけれど、当時関わったメンバーの顔ぶれが有名な人ばかり。しかも30代とかで手掛けているのがすごいです。今の日本は30代でどんどん活躍するような勢いとかがないし、活躍できる場がなくて上が詰まっている感じがします。タイムマシンで戻って、万博見てみたいなあ。2019/03/11
ひろただでござる
3
21世紀には明るく清潔で平和な未来が到来するということを、そこに至る困難を科学技術が解决してくれるということを、ここまで人類は進化したのだということを肯定的に捉えることができた万博だった。当時のことを懐かしく思い出しながら読み終えたけどまた大阪でするって?万博を利用して地域の活性化をしようなんて下心があるのなら失敗する(赤字ね)からやめたほうがええよ。2018/03/18
y_u
2
2025年の万博に日本は再び大阪を申請したということで、万博の誕生から現在に至るまでの歴史を知りたいと思い、購入した一冊。産業革命が進行していたロンドンで、1851年に開催して以来、時代と共にその内容や意義が変遷していく過程を具体的に分かりやすく解説している。特に、1970年の大阪万博に関する記述は熱がこもっている。しかし、情報媒体が多様化し、物質的なゆとりが大きい現在、万博そのものの意義が問われている。単なる経済効果だけを目にするのではなく、何を発信するのかを今後真剣に議論しないといけないと感じた。2017/05/28