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内容説明
現代イスラームの「過激派」と「穏健派」の争点はどこにあるのか? なぜ、同じスンナ派同士で争うのか? 「穏健派」のムスリムは、なぜ「過激派」を「破門」しないのか? イスラーム神学、古典イスラーム法学、現代イスラーム思想を横断し、問題の背景と核心に迫る。「イスラームのテロ」に警鐘を鳴らすのでも、「平和な宗教」としてイスラームを擁護するのでもなく、対立の思想的争点を浮き彫りにする一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さゆ
190
宗教において、イスラム教は「信条の体系」であるのに対し、日本人は何かの見返りを求める「術の体系」として捉えているという。確かに日本では、神社では賽銭、仏教ではお布施、クリスマスでは贈り物など、信仰を差し置いてビジネスやコミュニケーションが目的化している。しかし一方で、イスラム教では信仰する気持ちを一番にしており理解への根拠となるようだ。また、元々派閥は自称しているもので、スンナ派内の派閥でその名を巡る対立もあるというのも面白かった。序章だけでもおすすめの良書。2024/05/11
Aster
66
凄い。イスラム教への見方が全く違うものになった。イスラム教というと悪いイメージが先行しがちなのは否めなかったが、それは情報を流す側もあまり気にしていないからだろう。宗教に関してある問題が生じた時、それは個人や集団由来の問題なのであって宗教自体に問題があるのではない。偏った知識は自分で本を読んで解消していかないといけない。ただ、偏ったかどうかなどは本を読んで改めて知るものである…最初から気づく人はいない。2020/03/21
おさむ
36
イスラーム教は難しい。この本を読んでその思いを強くしました。それは、この宗教が過剰なまでに寛容であることの裏返し。ムスリムとは信仰心を持つもの。ただ、内心でアラーを信じていれば良く、厳しい戒律など身体的な行為は伴わなくても良い。また、異端者を出す事には極めて抑制的。そして、カリフの復活(1924年以来、カリフは不在)をめざしており、いまの政府はあくまで「みなし」の権力でしかない。だから、過激派に強くあたれない。ゆる〜い宗教だからこそ広く普及した一方で、対立も生まれやすい。2020/02/13
Francis
20
これも猫町倶楽部のスピンオフ勉強会の課題本だったもの。私はその時参加できなかったが、本を入手したので読んでみた。現代のイスラム教のいわゆる「イスラム過激派」など、非イスラム教徒には理解できない現象をどうとらえたら良いのか、この本でようやく明らかになったと言える。イスラム教スンナ派は私の所属するカトリック教会のような強固な教会組織がないためにクルアーン、ハディース、シャリーアの解釈でいくつかの派に分かれている状態は教会ごとに異なるキリスト教のプロテスタントに近いのかもしれない。イスラム教を知りたければ必読。2021/01/18
Porco
20
ISなどの過激派が、イスラム教の中ではどう位置づけられているのか。穏健派からどういう非難のされ方をしているのか。イスラム教の言論空間はどういう仕組みになっているのか。といったことを、わかりやすく説明してくれています。すごく良い本に出会いました。2020/06/01