内容説明
死刑執行の立会検事・郷名は処刑直前、死刑囚・北岡の無実を確信した。だが時はすでに遅かった。幼時、人買いに売られ奴隷生活を送った北岡は“風が――冬の風が”ということばを遺して絞首台に逝った。職を辞し、北岡の過去を求めて探索行に出た郷名は、北岡の就籍地宮崎で、なぜか暴漢に襲われた。北岡の生い立ちに、いったい何が隠されているのか――!? 巨匠が描く傑作ハード・ロマンの白眉!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さんつきくん
4
死刑執行された北岡。実は無実だった。立会人だった検察の郷名は北岡の過去を調べることにした。今では考えられない就籍の事実。北岡は5歳で宮崎・延岡の製糸業の家に売られ戸籍自体がなかった。郷名は北岡の先祖を調べるが、明かされるのは主人に仕え、身体で奉仕してきた女性達の存在だった。主人との子供が生まれ、またその子も本意ではない形で権力者に襲われ、子供を産む。この繰り返しだった。ルーツを辿ると言う意味では歴史も歴史も織り混ぜられており、興味深く読めた。男達の性欲に屈する女性達のやるせなさが印象に残る。2021/12/25
うえぴー
3
寿行さん2冊目。狂言回しの地検検事・郷名が見届ける死刑囚の死刑執行の直前に、実は無実の可能性が出てきた。必死の救命活動も空しく刑が執行されてしまうが、死刑囚から託されたある言葉をもとに郷名がその謎を追っていく……。第1章のあらすじですが、その後の展開は今までの読書体験にない、とても斬新なものでした。血と怨念のクロニクル。厳しい運命と、それに抗っていった女たちの物語。最近の小説と比べたら薄い、300ページくらいの本ですが、何冊ものいろんな物語を読んだ満足感の残る傑作です。2013/09/15
紘一
1
今から 30年くらい前に西村寿行は読んでいました。今読んでも 古さは感じませんでした。なぜなら 人間の業や本質がテーマだから2017/06/27
つきのわ
1
死刑執行の立会検事を指名された郷名。執行の2時間前に処刑さされる北岡の無実を確信するが、北岡は郷名に自分の出目を調べて欲しいと言い残してあまんじて処刑された。そこから郷名の北岡の過去を辿る旅に出る。死刑執行前の緊迫感は息が詰まる程だった。 幼少の頃、人身売買され奴隷として生かされていた北岡の過去を辿る事は容易ではない。たび重なる妨害、命の危機を超え郷名が辿りついた事実がある。北岡に続く女達の歴史は男達の性欲に無残に蹂躙された歴史であった。寿行の血を辿るシリーズは本当に読み応えがある。 2017/05/04
みっく
1
この著者の作品は偏見で今まで読んでいなかったが、面白い本だった。昭和初期まで人身売買が行われたと知って暗い気持ちになった。奴隷として売られた子供は労働力として使われ、女は10代前半にもなれば弄ばれる。16歳くらいで母親になり、娘を産み、その娘もまた…という悲劇の連鎖。ヒロインには全く魅力を感じないが彼女が救われたことでほっとした。2010/08/21
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