内容説明
裕福な親元を飛び出し、貸し間住宅・椋鹿館で気儘な一人暮らしを始めた少年コバヤシ。この世のすべてに退屈していた彼は、屋根裏から隣人の生活を覗き見ることに、新鮮な歓びを見出していた。そんなある日、館の住人4人が惨殺されているのを発見する!(「屋根裏にも散歩者」) 江戸川乱歩の世界を大胆不適にアレンジ。謎と狂気に満ちた物語の数々が幕を開ける!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
81
さぁ、寄ってらっしゃい、見てらしゃい。ここは世にも禍々しくも芳しき変態の世界。誰も彼もが人の理と相容れず、それでも自分を恥じずにその生き様を真摯に貫く誇り高き、変態達。明智探偵はそんな愛おしき変態達を飼い、愛玩し、弑虐し、残虐な死や事件にエクスタシーを感じる御方だし、小林少年に至ってはヤモリのように全裸で屋根裏を這い回り、全てを睥睨しながらも明智探偵に虐められると「イヤだ、イヤだ」と言いながら恍惚となる変態一年生だ。乱歩から抽出された、痺れるように甘美な毒にむしゃぶりつくも舐め廻すも視姦するもアナタ次第。2018/11/09
Bugsy Malone
66
嗚呼、なんて素晴らしく淫靡で背徳的な連作集なのだろう。自らの嗜好に身を任せ、夢とうつつを往き来し、或る者は夢に囚われ彼方へと、また或る者は夢をうつつに持ち込み罪びととなった。その者達さえも妖しげな魅力と圧倒的な力で支配し、同時に居場所と安らぎをも与える変態女探偵明智傷。乱歩の妖しにどっぷりと浸かった著者が、異人たちに愛を込めて再構築したかの様な物語群は、乱歩を模した文体も含めどれも堪らなく蠱惑的だ。読み足りない、まだまだこの世界に浸っていたい。 2017/12/29
sin
57
乱歩数々の異質な物語に触発され産み出された語り手のコバヤシ少年や明智傷探偵を含む特殊な性癖を有した異人たちの物語…しかし、あの時代に稀有で変態的な表現をものにした乱歩の戦慄の作品群には競ぶるべくもなく、ミステリにも怪談にも振りきれず、人物の変態表現にのみ囚われた感が拭えない。2019/03/11
瑞佳
44
やーもー聞きしに勝る変態度。共感はとてもできないけれど理解はできる(え゛っ!?)大乱歩の小説を大胆にアレンジした物語は数々あれど、こんなにねばちっこい作品は初めて読んだかもしんない。だいたい明智探偵がグラマラスな美女で倫理観ゼロのサディストな変態探偵で、助手の小林少年は夜な夜なスッポンポンで屋根裏を徘徊する危険度マックスな変態少年という設定とかどんだけ?登場する変態さんもさすが選ばれし者といったツワモノぞろい。目に沁みるような奥深い世界と哀愁がそこはかとなく香る一品であった。2017/10/29
かめりあうさぎ
33
初読み作家さん。短編6話収録。ミステリではなく変態小説。読む人が読めばこの変態性は性的なものなのでしょうが、個人的にはただ「汚ない」という感情しかわかなかったので、この手の嗜好を理解する資格がないのかと。第一話「屋根裏にも散歩者」は原作「屋根裏の散歩者」を少し多目にいじってますねーくらいの気持ちで読めたが、どんどんヤバくなっていく。。原作自体かなり振り切ってる「芋虫」のオマージュであろう「異の虫」がダントツで気味悪かった。美しいものに憧れる気持ちと、イケないものを垣間見たい気持ち。人間の心理とは不思議。2018/03/10