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内容説明
ある「こども食堂」での話。
今日は鍋にしようと、大人たちが鍋料理を作ったところ、高校生の女の子が「みんなで鍋をつつくって、本当にあるんだね」と言った。彼女には、その経験がなかった。みんなで鍋をつつくというのは、テレビの中でだけ起こるフィクションだと思っていた。スーパーマンが空を飛ぶように。
同様の話を、よく聞く。大学生のボランティアに会った中三生が「大学生って、本当にいるんだね」、簡単なクリスマスパーティをしたら「これって現実なのかなぁ」。中三生でも「偏差値」という言葉を知らない。高校生がテスト中に先生を呼び止めて「『氏名』ってなんて読むの?」と聞く。
「あたりまえ」の経験や知識が欠如している子どもたちが増えている。
この子たちが世の中を回すようになったとき、世の中はどうなるんだろうか?
このような状況に腐らず、諦めず、1ミリでも対策を進める人たちが、まだこの国にはたくさんいる!
「あの子はラッキー」で終わらせない。
1ミリを動かすどんな試みが巷に溢れているか。その諸相を紹介していく。
そこには、状況の厳しさと同時に、それに立ち向かう希望が示されるだろう。
子どもの貧困は減らせる。私たちの社会は、私たちの手で変えていける。
それは、たった1ミリに敬意を払う、私たち自身の姿勢から始まるはずだ。
貧困問題の第一人者が取材した、「解決」の最前線!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
56
貧困家庭の子どもに特化した話でなく、子どもへの取り組みから社会をつくり直そうという提案。何となれば子どもは私たちの未来そのものだから。パワハラ発言辞任で話題の明石市前市長インタビューも。泉前市長主導で素晴らしい施策が行われていた。惜しい。2019/02/03
おさむ
42
ヤフーニュース個人の記事をまとめた新書。10年以上前から「貧困」の問題を訴えて日本社会での可視化に努めてきた著者。これらの記事は価値観を同じくしない人たちにひたすら話を聞き、理解することにエネルギーを注いだ結果の集大成。現場に立脚し、各地で広がる様々な動きを丁寧に紹介しています。子ども食堂が有名ですが、他にもいろいろな取り組みがあることを知りました。世界平均よりも日本の子どもの貧困率が高いという現実をしっかり受け止めて、1ミリでも前に動かしていこうとする著者の姿勢には頭が下がります。子どもは社会の鏡です。2017/11/13
テツ
26
いい年こいた大人がまともに働かなかったりして結果的に陥る貧困なんて野垂れ死にするとしても放っておけばいいと思うけれど、貧困家庭に生まれ落ちた瞬間にほぼ将来的にその子自身も同じ道を辿ってしまうことが約束されるような社会は何とかしなければと強く思う。生きるための知識と知恵を教える余裕すらない貧困家庭をどう救うべきなのか。無計画にこどもを産んで(産ませて)無計画に育てるアホはどうでもいい。運悪くそんなところに生まれてしまったこどもに力を与えるにはどうしたらいいのか。2018/08/16
Nobu A
19
湯浅誠著書3冊目。「ヤフーニュース個人」に執筆したものを新書化。関わってきた子供達、「こども食堂」や「無料塾」等、支援をする人達、動き出す自治体や企業、貧困の連鎖を断ち切る為に、立ち上がる元生活困窮者、研究者、篤志家と様々な人達にインタビュー。6人に1人が貧困と言われる現在、見えない子供貧困の実態を可視化。心が痛む。同時に、そんな現状を変えようとする全国での動きに胸が熱くなる。貧困の現状がもっと認知され、国の抜本的な政策へと繋がることを切に願う。著者の「このまま終わらせない」と言う静かな強い意思を感じる。2020/04/03
suite
19
「『努力する』というエンジンが備わっていない」の話が悲しい。ないのでなく、条件が整わなすぎて、エンジンが極限までなってしまうということなのだろう。食べるものと、人とつながりと、将来働いていくための支えになる力を身に付ける機会が、若い人たちみんなに保証される世の中がいい。フードバンクは必要な世帯にもっと届いてほしい。「充分な依存」「一緒に過ごす時間」の大切さ。高校より上の段階への進学は貧困の連鎖を断ち切る有効な方法なはずだが、希望があって力があっても学費のために困難がある現状が本当にもどかしく苦しい。2018/09/02