内容説明
宮城県緑原町に老人定住型施設「プラチナタウン」が開設され四年。町は活気を取り戻し居住者は増えた。だが、町長の山崎は不安を覚えていた。いずれ高齢者人口も減り、町は廃れてしまう――。山崎は、役場の工藤とともに緑原の食材を海外に広め、農畜産業の活性化を図ろうとする。だが、日本の味を浸透させる案が浮かばず……。新たな視点で日本の未来を考える注目作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
312
前作から間をおかず続けて読了。なので感覚としては二冊で一作。『プラチナタウン』が起承、『和僑』が転結と考えると収まりが良く、進行がストレートすぎて平坦なところがあった『プラチナタウン』に起伏が生まれる。町のその後も町長選挙に絡めて描かれ、さもありなんな人間模様が楽しい。少子化対策として海外進出を、という一貫した著者のスタンスに、加工食品のワンアイデアが足さると、マンネリもない。狭い町に、良いタイミングで、ずいぶんと適当な人材が揃いすぎな気はするが、これくらいスケールの大きな物語だと、逆に引っ掛からない。 2020/04/08
ユザキ部長
67
衛生管理の意識が高く、勤勉で、おもてなしの精神を持つサービス。和洋中まぜて独自の文化と技術をもつ我々ニッポン。長い歴史の中で故郷を頼らない強かな華僑と比べ如何なものか。いや新しい形態を構築していく和僑。顧客の顔がダイレクトに目に見える商売で挑戦。挑戦が成長につながる。2020/10/22
exsoy
61
前作『プラチナタウン』の続編。いわゆるグローカル。このままじゃいけないと感じていても行動する人、できる人は限りなく少ない。正直、自分もそうだ。2020/01/07
ぷう蔵
39
この小説が描いている対応策で10〜20年後の人口減少に歯止めをかけられているか、という部分はさて置き、農畜産業の構造改革、流通改革については大変面白く興味深く読んだ。作者の取材力も相当なものであろうから、まんざら不可能というか現実味がないわけでは無いのかもしれない。私の地区もほとんどが兼業農家、若しくは年金を貰いながら農業をやっている高齢者。跡取りは定年まで都会、帰ってるかどうか…。たぶん数年後、農業ができなくなる家が半数以上。でも新しい風に乗らないのが農協に飼いならされてしまった今の農家なんですよね。2017/09/13
Walhalla
38
前作の「プラチナタウン」ですが、日本の初代の地方創生大臣も高く評価されていたと言いますから、これはもうホンモノですね。今回は、「プラチナタウン」のその後を描いた内容になっていますが、ビジネスモデルが上手くいっているにも関わらず、さらに10年後・20年後を見据えた問題提起をするあたりが、いかにも楡周平さんの経済小説作品ですね。 第1次産業の再生がテーマですが、農産物を売り切りで輸出するのではなく、日本の食文化を生かしながらグローバル版6次産業へと発展させるという考え方が描かれており、とても勉強になります。2021/08/17