内容説明
カニバリズム(人肉嗜食)は人類の根源的タブーのように思われながら、実のところその痕跡は古来より無数に残されてきた。著者の専門は中国でありながら、古今東西の記録・小説を博捜し、ときに舌鋒鋭く、ときに諧謔と皮肉をもってカニバリズムを縦横無尽に論じる。人間の薄っぺらな皮膚を両手で思い切りめくり上げ、曝し、目を背けたくなるようなものを直視することで、「近代合理主義精神」なるものの虚構を暴き、「良識」を高らかに嗤いとばす。人肉嗜食、纏足、宦官……。血の滴るテーマで人間の真実に迫る異色の作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
89
タイトルに惹かれて手に取りました。カニバリズムには呪術的な意味合いのある儀式と遭難などの食糧危機・極限状態で行われることを指摘。中国文学や歴史には疎い私には読んでいて理解が及ばない部分もありましたが、宦官や纏足、刑罰、それが齎すエロティシズムなど興味深く読みました。本作に引用が多かった魯迅の「狂人日記」が気になるので挑戦したい。それにしても人肉とはどんな味がするのだろう。酸味が強いと耳にしたことがあるけれど真相は如何に。タブー故に惹き付けられ、魅惑されるカニバリズム。人間が持つ暗部の深淵を覗き込む1冊。2017/07/04
HANA
60
中国文学者による随筆集。碩学の先達によって、地の迷宮を案内される快感を存分に堪能させてもらった。冒頭の「カニバリズム論」以外は中国の所謂闇の部分に関する論考が多し。どれも興味深く読めたが、白眉はやはり「カニバリズム論」。「メデューズ号の筏」から始まり、「ひかりごけ」や「狂人日記」果てはサドの諸作と文学の側から世の良識を洗い流している。エロスとの関連で体制を論じる部分は、七十年代八十年代っぽくて懐かしいなあ。他にも中国における魔術やマゾヒズム、魯迅に影響を与えた他国の小説等、いやはやどれをとっても興味深い。2017/09/20
rinakko
15
以前から読みたかった本。とても満足。人肉嗜食、纏足に宦官、刑罰…という、後ろ暗さを伴うからこそ魅惑的な題材が、中野さんならではの切り口と論点でばさりばさりと説かれている。毒やや多めのきつい匙加減に、しばしばにやり…。文庫版のあとがきには“少作(わかがき)”とあるが、「征服の修辞学」としてのカニバリズムという視点を指し示す件など私には痛快だった。言及される文学作品も多く、「ひかりごけ」や「狂人日記」「青頭巾」「O嬢の物語」「特別料理」『韓非子』、谷崎、マン、スウィフト、サド…など、その渉猟ぶりに惚れ惚れ。2017/06/28
4fdo4
14
著者は中国文学研究者。論文というよりも半分はエッセイ。中国文学や中国近世以前の文化はカニバリズムとの関わりが多い。とはいっても、文学ではメタファーだったりもするし、文化としてもはたしてどこまでが本当なのかと常々思う。おそらく回答は出ないだろうけど。2019/11/10
白義
14
文明の良識というのは同類を喰らうカニバリズムを禁じ、厭うことで成り立っている。だが、その良識や合理主義というのはどこまでその仮面を維持できるものか、むしろ同類を残虐に殺し喰らうカニバリズム、その残酷さこそが文明の極致ですらありはしないだろうか?残酷という文化を持ったのが人間という動物だけならば……かくして中国に限らず古今東西ありとあらゆる人肉食の事例、文学に現れたるその思想を自由闊達に論じ、カニバリズムや残虐刑の先にある、夜の想像力を全面に解き放った本書はまさしく人を食う側の論理で描かれた禁断の名著である2017/12/02
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