内容説明
「私にとっての川柳は、人間にとって大切な水のように必然であった文芸なのかと思えてきた」。川柳一族の一人として、川柳作家になるべき宿命を負ってこの世に生を受けた著者。16歳で作句活動をはじめ、学生生活、就職、結婚・・・とめまぐるしく変わる人生のステージで一時は川柳に遠ざかった時もあった。紆余曲折を経て、運命に導かれるように50代で再び川柳と巡り合ってからは、為すべき「業」を悟り、人間の裏の裏まで詠み尽くさんと赤き情熱を燃やす。「第一章 すりりんご」「第二章 走馬燈」「第三章 飛行機雲」「第四章 凪」の4章構成。
風邪で寝た時だけ貰うすりりんご
私の心緑に負けている
自分の目信じ自分の耳信じ
いつまでも笑うモナリザの不気味
どん底を知った体が動じない
人生の苦労はいつか凪になり
ライバルに慰められてムッとする
躓いた石を次には蹴り返し
コート脱ぐ陽気疑わないで春
春という不思議に人は惑わされ