講談社文芸文庫<br> 橇・豚群

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講談社文芸文庫
橇・豚群

  • 著者名:黒島伝治【著】
  • 価格 ¥1,463(本体¥1,330)
  • 講談社(2017/09発売)
  • ポイント 13pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062903561

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内容説明

昭和初期に隆盛したプロレタリア文学運動の潮流の中で、写実的な文章と複眼的想像力による傑作短篇を立て続けに発表して一躍脚光を浴びながらも、肺病による喀血から郷里・小豆島での療養生活を余儀なくされた黒島伝治。官憲の横暴に対する農民の知恵がドラマを生む「豚群」、戦争の悲惨さと裏腹の滑稽な現実を鮮やかに描いた「橇」、「渦巻ける烏の群」など時代を超えた輝きを放つ代表作集。

目次

電報
二銭銅貨
盂蘭盆前後
豚群
彼等の一生

渦巻ける烏の群
パルチザン・ウォルコフ
浮動する地価
前哨
人と作品  勝又 浩
年譜  戎居士郎
著書目録

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

燃えつきた棒

34
黒島伝治のことを教えてくれた荒川洋治さんに感謝したい。彼の評論やNHKラジオ第2の『カルチャーラジオ 文学の世界 荒川洋治の“新しい読書の世界”「昭和・戦前の小説」』に出会わなかったら、たぶん僕は黒島もこの短篇集も知らずに終わったのではないか?/ 『盂蘭盆前後』:農村に生きる人々の喜びと悲しみを鮮やかに形象化している。景気の浮沈に巻き込まれて絶望しつつも、いつの日かそれさえも乗り越えて行く人々の姿にはどこか希望さえ感じられる。/ 2021/05/19

のり

9
処女作「電報」は、農村の貧しい農家の息子が優秀なのに周囲の目から逃れられなかった両親のためにその進学が絶たれる話。同じく〈農村もの〉である「二銭銅貨」「豚群」(ともに『文芸戦線』(1924年創刊)初出)も、前者が二銭安い緒を幼い息子に与えたために事故死させた両親の悲哀を描き、後者は役人の目を逃れるために豚を放し、裏切り者に翻弄されるも最後はやりおおせる農家の青年を描く。「豚群」は黒島伝治の作品には珍しく滑稽味もあり、救われる結末である。(→)2019/02/07

塩崎ツトム

6
読んでいてひたすら胸の当たり、心臓あたりをギュウッと締め付けられる小説が並ぶ。弱者は強者にひたすら搾取され、時間と蓄財も、すべて奪われて、富めるものはさらに狂暴に貧しき者を搾取していく。弱者は泣けない。泣いたところで明日も搾取され、子や孫も搾取される。地獄では涙も枯れる。作中で泣くのは不慮の事故で息子を亡くすおっ母だけである。だれも弱者の悲しみを知らない。そして弱者は己の悲しみを知らないどころか、怒りの矛先すら誤る。2021/06/08

刳森伸一

5
農村の貧しい人々やシベリアに出兵した人々を写実的に描く。プロレタリア文学ということだが、実際には弱き者に寄り添ったリアリズム文学といった感じ。収録作に外れはなく、いずれも高水準だが、ラストが壮絶な「渦巻ける烏の群」が特にいい。2017/12/06

まどの一哉

3
舞台は作者の出自を題材にして、小豆島の農家であり、醤油工場の労働者でもある。当時は身分や階層というものが根強く意識されていて、下層民の子供は進学を志しただけで地主や周囲の村人から白い目で見られる。小作の子は小作、醤油蔵の労働者の子は醤油蔵の労働者と決まっていて、滅多なことでは抜け出すことができない。抜け出してはならないといった空気だ。常に周囲の目を気にしながらでないと自分の人生も決められない。これが20世紀初頭の日本の村落だが、その頃からどれくらい進化しているのか?2017/09/11

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