内容説明
一九七七~八〇年「奇想天外」に発表したSF小説十一編に加え、単行本未収録の二作「クリシュナの季節」&マンガ「いたずららくがき」も特別収録。異世界へ導かれる全十六編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
♪みどりpiyopiyo♪
39
はじめ、そこは黄土色の広野であった。ある日、北の果てよりひとりの"大神"が現れ… ■少女漫画の大御所の小説集を読みました。萩尾望都の幻想世界。表題作は170ページ程の中編。他に、3〜50ページ程の小品が15編(内2編が漫画)■この世代の少女漫画家には、神話的なSFを得意とする人が何人か居ますが、著者もその1人。この本もその趣向を継いだ 宇宙と異世界を巡るSFとファンタジーが楽しめます。■静かに心に流れ込んだりコミカルだったり。なるほどこれが萩尾望都か、と感じ入りました。(初出 1977〜2003年)(→続2018/05/02
えーた
19
萩尾望都の小説集。表題作「美し神の伝え」を含め、全体的にレイ・ブラッドベリを彷彿させる不気味で美しい物語が並ぶ。奈良の新薬師寺の十二神将が動き出すコミカル作品『守り人たち』、怖いほうのモリミーを思わせるホラー作品『クレバス』、たぶんご自身の体験をもとにして書かれた『マンガ原人』等々、多種多様な作品があって楽しい。「世界の半分は夢でできている」という一節が心から離れない『クリュシュナの季節』、少しポーの一族っぽい『左手のパズル』が特にいいと思いました。昔の少女漫画家の方って本当に神懸った作品を書かれますね。2021/07/19
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18
上下や前後は絶対的なのに、なぜ左右だけが相対的なの。この世界で僕は左利きなのに、鏡の中のセカイではミギキキで。右が左で、左が右で。この世界とあのセカイ。僕はどちらにいるのだろう。貴方がキスした手の甲。この手は右手だったのか、左手だったのか。その答えを聞いてはじめて左右が絶対的になる。2021/02/06
阿部義彦
18
河出文庫です。半分以上は70年代後半に雑誌「奇想天外」に発表されたものです。私の50%はSFで出来ていると御本人も認める通りにSFファンタジー色の強い作品です。2018/01/13
ケ・セラ・セラ
17
昔「SFは私にとって『サイエンス・フィクション』ではなく『スペース・ファンタジー』だ」と誰かが言っていた。萩尾作品を読むたびにそれを思い出す。一行目からわたしの中で画が広がっていく。次々と繰り出される時を超えた風景。わたしは今いる世界ではなく、もう一つの世界へ。「子供の時間」「クレバス」「左手のパズル」が面白かった。「左ききのイザン」はすでに読んでいたけれど、こんなふうに前半小説、後半漫画という描き方もあるのだと驚き、楽しめた。どの作品もぜひ漫画でも読んでみたい。山上氏の解説も楽しかった。2017/11/29