内容説明
江戸、そして大坂――百花繚乱に咲き誇った、17世紀から19世紀の江戸期の文学。井原西鶴・上田秋成・山東京伝・為永春水の、粋で美しく鮮やかな四作をすべて全訳・新訳で収録。
解説=池澤夏樹
解題=佐藤至子
月報=田中優子・宮部みゆき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
130
江戸文学で津の作品が現代語訳として納められています。「好色一代男 島田雅彦」「雨月物語 円城塔」「通言総籬 いとうせいこう」「春色梅児誉美 島本理生」でかなり面白いメンバーです。私は雨月物語が好きでこの選択はいいと感じました。雨月物語以外は今までに読んだことがなく、このような作品が江戸市民に好まれていた作品なのかという感じを持ちました。2015/12/26
starbro
96
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集全30巻完読チャレンジ第十二弾です。今巻は「好色一代男」が一番の目当てです。もう少し島田雅彦色がでるかと思っていましたが、意外とオーソドックスな現代語訳です。それでも貨幣価値を現代の水準に置き換えているので、井原西鶴の経済的な拘りが理解できました。それにしても色事に500億円を使うとはスケールの大きな話です。これ以外では、島本理生の春色梅児誉美です。限りなく現代の恋愛小説のようです。最後にカミングアウトするとこれまで好色一代男が「源氏物語」のパロディとは知りませんでした。2015/12/14
らむれ
87
まず、帯と装丁に魅かれ手に取り。作家陣を二度見し、シリーズをググって鼻血…という流れで読み始めました。「好色一代男 島田雅彦」感情移入とかできないよね、いろいろ突出しすぎて笑 これが回ってきた島田さん、さぞ苦労したことでしょうよ笑「春色梅児誉美 島本理生」一番わかりやすくて現代チック。この、なんとかなるよね!的なノリがお江戸なのかしらね。花街の女性はどんな作品でも逞しくて惚れ惚れします。「雨月」はちょっと保留中。また読了したら追記!2016/01/13
ゆかーん
63
「日本文学全集」というお堅いタイトルとは裏腹に、何とも卑猥な『好色一代男』という本が、1700年の江戸時代に存在していたという事実に驚愕しました!!女性3742人、男性725人という数字。この数は、主人公、世之介が7歳から60歳までに交わった人の数を表しています。「酒池肉林」という言葉が相応しい、色欲と食欲の欲望を満たす旅路に、女の私はドン引きしましたが、男性から見たら羨ましいと思ってしまうのかもしれません。江戸時代の庶民が夢中になってこの本を読んでいる姿を想像して、ちょっと複雑な気分になった一冊でした。2016/03/10
依空
54
江戸文学なるものをまともに読んだのは、恐らくこれが初めて。現代語訳されている為大変読みやすかったです。けれどあまりにも言葉を現代に沿わせすぎているように感じる箇所もあり、若干興醒めしてしまったところもありました。「好色一代男」はここまで色事に突き抜けられると、いっそ笑えてきますね。そして同時に、決して満たされることのない世之介が憐れでもありました。「雨月物語」は当時の江戸の教養の高さを感じます。「通言総籬」は本文より注がひたすらに面白く、「春色梅児誉美」は突っ込みどころ満載のエンターテイメント作品でした。2016/01/04