内容説明
父祖伝来、五百年の歴史を護ってきた佐竹義重。今は子・佐竹義宣に実権を譲り隠居した身だ。そんななか、天下統一を成した豊臣秀吉より命が下る。
「常陸を平定せよ」
佐竹家の誰もがなし得なかった夢を我がなし得る。年老いた身でありながら早速平定に取りかかる義重だったが……。
父祖伝来の重み、老いへの恐怖、次世代へと委ねるもの。歴史小説の麒麟児が佐竹義重を活写する!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
104
小田原征伐後の佐竹父子の物語。鬼義重と恐れられた佐竹義重。子の佐竹義宣も傑物であった。戦国の代で二代続けて英傑が現れる大名も珍しい。それでも関ヶ原合戦で石田三成に近しい立場であった佐竹家は常陸から出羽秋田へ改易となる。天下人に使える難しさ、そして家を保つ難しさがよく書かれている。豊臣政権が出来るまでは合従連衡により武力で敵と戦ってきた。天下が統一されてからは政治が大名家の命運を左右する。畿内にいる義宣は世の中の変化を着実に掴む。しかし、佐竹が常陸を保つことは難しかっただろう。もう少し動きが欲しかったかな。2019/08/11
ポチ
69
鬼義重と呼ばれた佐竹義重の隠居後からの話。息子の義宣と共に佐竹家500年の誇りを守る為に苦慮する姿が描かれている。箕輪さんは3冊目、読みやすくなかなか良かった。2018/02/07
如水
26
佐竹義重、佐竹氏最大版図を築いた人で『鬼義重』や『坂東太郎』と呼ばれた戦国の雄です。が、この話は隠居後にスポットを当てた物語です。隠居と言っても侮るなかれ、この人は凄まじい。息子義宣のバックアッパーとなり、周りに鬼の睨みを利かしながら常陸国の安定を図ります。が、時代が移り変わり、関ヶ原へ・・・義重の無念さが滲み出てた作品ですが、其処は作者が上手く持ち前のスピーディーさと清涼感でサラッと話を盛り立ててます。楽しかった〜♪今度は『鬼義重』全盛の話が読みたいと思いました。蓑輪諒さん書いてくれないなぁ?2017/09/29
maito/まいと
22
名門・佐竹氏中興の祖・「鬼義重」こと佐竹義重の“隠居”直前から最期までを描く、切り取り方が珍しい歴史小説。毎回驚きの題材を出してくる箕輪さんにしては、割とおとなしめだなあ(失礼)と思いつつ、中盤まで読んでいくが、とある女性の死から、一気に物語は動く。秀吉の死から関ヶ原へ、選択を迫られる佐竹。誇り・老い・恐怖・意地・・・様々なものがないまぜになるなか、本当の己と向かい合い、答えを出す義重の姿は、長く生きられる現代の私たちに、命の燃やし方を迫ってくる。「将来のために生きている限り、人の時間が止まることはない」2017/12/19
onasu
22
500年にわたり常陸国北部を領してきた佐竹氏の20代目義重。北方は米沢の伊達政宗、南方は小田原北条氏との戦いがあり、その牽制の意味で、上杉謙信、豊臣秀吉と誼を通じてきたが、北条氏が滅ぼされるに至り、佐竹氏にも変容の時が。 嚆矢は関白秀吉から告げられた常陸国全域の平定。早期にとの意図を図り違え…。 当主の座は嫡男の義宣に譲っていたが、平定を機に実質的にも隠居し、水戸への移動、朝鮮出兵を見守ってきたが、秀吉の死により、またも動乱の波が。 駆け足で物足りなさもあるが、またひとつ戦国ネタが拾えた好著でした。2017/11/29