内容説明
2016年7月に起こった相模原障害者施設殺傷事件は日本社会に大きな衝撃を与えた。自分勝手な言い分によって引き起こされた事件は、死者19名、負傷者26名という、戦後最悪の大量殺人事件となった。世界では欧州や中東などで自爆テロが相次いでいるが、こうした不特定多数の人々を巻き込む大量殺人・自爆テロ事件だけでなく、警官による自殺や親子心中、介護心中など無理心中にも通じるのが絶望感と復讐心だ。強い自殺願望に突き動かされ、誰かを道連れにせずにはいられない拡大自殺の根底に潜む病理を分析する。
第一章 大量殺人と拡大自殺
第二章 自爆テロと自殺願望
第三章 警官による自殺
第四章 親子心中
第五章 介護心中
終 章 拡大自殺の根底に潜む病理
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
akiᵕ̈
37
物々しいタイトル。その言葉が示す数々の事例は、自分の勝手な思い込み、強い自己愛、被害者意識、疎外感、アイデンティティクライシス、引きこもり、介護と多様に渡る。介護に関しては周りに助けを求められず追い込まれてしまう苦しみに、もう少し行政の力が手を差し伸べられないのかとやりきれない気持ちになるし、殺人や心中を起こす人たちの身勝手さには憤りを感じるが、その人格やきっかけを作ってしまった環境や背景を知ると、そこにもまた複雑な気持ちが沸き起こる。親子のコミュニケーションがどれ程に大切な事かと改めて感じさせられる。2021/08/10
すーさん
34
重いテーマではあるが、読み進めていくうちに自分の周りで起きたとしてもおかしくないと感じた。介護自殺、介護殺人のところは少子高齢化が進む日本ではかなり身近であり、怖くなった。強い孤独感は人の思考回路に大きな影響を与える。自分一人ですべてを背負わないといけないという責任感と使命感が自分を追い詰め、抑うつ的にさせる。自己責任論は強い被害者意識を生み、自分だけが何故苦しまなければいけないのかと思い、犯罪を犯した後も自己正当化する。どうすればいいのかと言うことについては具体的には述べられていないが、考えていきたい。2019/05/08
香菜子(かなこ・Kanako)
34
拡大自殺 大量殺人・自爆テロ・無理心中。片田珠美先生の著書。絶望感と復讐心で他人を巻き込みながら社会を震撼させるような拡大自殺事件の発生が日本で増えている。相模原障害者施設での事件、秋葉原事件、古くは土浦連続殺傷事件も一種の拡大自殺型の大量殺人・自爆テロ・無理心中。絶望感と復讐心でこのような拡大自殺を考える人がこれ以上増えないように、日本社会全体として改善すべき点を真剣に考えなくてはいけない時期にきていると思います。2018/11/11
ロア
34
アメリカをはじめ海外の事例が多いような?銃乱射や警官の発砲などは日本では殆ど発生しませんよね。自爆テロは自殺とはニュアンスが違うような気がするのは私だけかな。いずれにしろ、無理やり道連れにされるのは嫌ですね(´・ω・`)貧困や病気などで、辛くて苦しくて死んでしまいたいと思っている人を救えないような日本なのだから、せめて安らかに死ねるように取り計らって欲しい。2017/10/08
うさうさ
25
拡大自殺とは、絶望感や復讐から誰かを道連れにした事件を起こすこと。死刑になりたくて通り魔殺人を起こしたり、新幹線での焼身自殺、介護殺人など。障害者施設の殺人事件など新しい事件も取り上げている。 これだけの格差社会、不寛容社会で、これからこんな事件は増える一方だと思う。2018/08/29