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内容説明
ディアスポラ以降、世界中に散り散りとなり、それでもなお一つの「民族」という名のもとに存続しつづけてきたユダヤ。彼らは、現実の地上において安定した土地を見いだすことはできず、また自分の内面においてもアイデンティティを見いだすことはできない宿命にあった。そのため、彼らは歴史の中で、混乱と分裂と抗争の種となり、社会の不安や憎悪を掻き立ててもきた。そうした中で、ユダヤはどのように、自分たちを世界内に位置づけようとしてきたのか? 本書では、そうしたユダヤ思想を知ることのできる主要な書物を追いながら、その核心へ踏み込んでいく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
30
興味深い書物だ。合田正人自身の思想的格闘を生々しく綴ったドキュメンタリーとしても読めるし、もちろん虚心に「ユダヤ思想」に触れたい人に対して開かれた書物としても読めるだろう。これまで読んで来なかった(というか、読んでもさっぱり理解出来なかった)スピノザを読みたいと思わされた。そして、スピノザと格闘するレヴィナスを合田が研究していることをもまた面白いと思ってしまったのである。逆に考えれば、私自身がそういう合田の思想のベースをある程度知っているマニア(?)だからこそ読めたのかな、という不純な感想をも抱いてしまう2018/09/22
さえきかずひこ
9
きわめて難解であり、ユダヤ思想の入門書ではない。冒頭はボブ・ディラン、キューブリック、クラークなどの話で柔らかいが、そのあとはハイコンテクストかつ非入門的な話が続く。作曲家メンデルスゾーンの祖父の思想の話や、スピノザ、レヴィナス、ランダウアー、ブーバーといった人々のユダヤをへめぐる議論や影響関係が記述されている。なぜ新書で出したのかはよく分からないが、景気が良かったら、単行本として出版されたであろう専門的な一冊である。2017/12/18
amanon
5
ユダヤ思想というより、ユダヤ思想を切り口にした現代思想概論という趣が…それはともかくとして、クリスチャンであり、レヴィナスやスピノザも多少かじっていたから、ユダヤ的なものにもある程度通じているつもりではいたが、これは新書とは思えない難物。ただ、ユダヤ的なもの、あるいはユダヤそのものの定義がいかに困難でややこしいものであるか、またシオニズムという運動を巡っても様々な立場があって、一筋縄ではいかないということが理解できたか。また、ユダヤ教から破門されたスピノザがユダヤ思想で大きな位置を占めるというのが面白い。2021/04/24
nranjen
5
他の方が書かれるレビューとはありがたいもので「合田節」なるものがあるらしいことを知り、よく言い表わすものだ!と感慨にふけっていた。昨日読み終わったばかりなのに、そのあとに聞いた講義の印象が強くて内容が具体的に思い出せないのが辛い。しかしユダヤとは何か定かでない中ユダヤ思想を語るということは非常に難かしいと思われてならないのだが、それを実践できる著者のこれまでの経歴と守備範囲の広さはやはり凄い。宿題を終えたら、もう一度読み直そうと思う。2019/07/10
ぷほは
5
「ユダヤ思想史入門」ではなく、「入門ユダヤ思想」なのである。つまりユダヤ系の現代思想家をたくさん紹介してくれる本という立ち位置で、ユダヤ思想そのものの体系性は別に学べない。それは新書というメディアをよく活用するがための戦略ということになるのだろうが、例えばユダヤ系の思想家紹介といった面から見ても、ジンメルが取り上げられていないのはやや不満が残るとか、サイードの扱いはそれでいいんですか等の諸々気になる点はある。しかし情報量は多いので、例えばメンデルゾーン等の議論が詳しく紹介されているあたりは勉強にもなった。2017/08/05




