悲劇の発動機「誉」

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悲劇の発動機「誉」

  • 著者名:前間孝則
  • 価格 ¥1,320(本体¥1,200)
  • 草思社(2017/08発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784794221209

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内容説明

日米開戦の半年前、中島飛行機の若き天才設計者・中川良一は、野心的な高性能の次世代エンジン「誉」を完成させる。 小型軽量ながら当時の世界最高水準を実現したまさに奇跡のエンジンであり、彩雲、疾風、紫電改などの新鋭機に次々と搭載されていく。 だが想定されたハイオクタン燃料が入手できず、原材料の質低下、熟練工の軍隊召集、陸海軍の不手際などによりトラブルが続き、その真価を発揮できることなく敗戦を迎えた。 本書は「誉」の悲劇を克明に追い、現代に連なる日本の技術開発や組織運営が抱える矛盾と問題点を浮き彫りにする。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ゲオルギオ・ハーン

30
世界最高水準を目指した戦闘機用発動機『誉』だけに留まらず、開発した中島飛行機の概略、開発や経営について三菱と比較、当時の飛行機用エンジンを開発していたトップ企業の概略そして当時の日本軍(特に海軍)における兵器開発戦略の問題点もまとめたボリュームのある内容。誉の設計者中川氏に直接インタビューもしているが、中島飛行機と誉の問題点を容赦なく指摘している。著者は元IHIのジェットエンジン設計者ということもあって隅々まで逃げることなくはっきりとした説明があって読んでいて気持ちが良かった。2021/08/08

to boy

21
読み応えのある一冊。零戦に搭載された「栄」に続く中島飛行機が開発した発動機「誉」を主軸に、大戦中(さらには日本の)の航空機産業を俯瞰したものです。突出した設計とそれに追いついて行けない工業力。また軍部の暴走など全く余裕のない軍需政策に振り回された技術者達が可哀想になってきます。2015/06/14

とろとろ

18
戦争の敗因の一つと言われる誉エンジンの開発元である中島飛行機の話?。似たような記述や批判が繰り返し出てくる。このエンジンの(存在も含めた)問題点を知っている人から見ると当たり前の説明と批判。設計者は東大卒僅か4年にして主任設計者となった。だから、大学の卒業研究の延長的な発想で設計が行われた。問題は現場の技術レベルを知らない新米技術者の生産性を無視した設計と、技術の本質が分からない軍上層部によるゴリ押しか?。不調のエンジンを押しつけられて苦労して戦った前線の兵士の方がはるかに悲劇であったと思う。2015/08/26

モリータ

13
◆2007年単行本・草思社刊、2015年同社文庫。◆小型で高性能だが様々な問題を抱え、実戦において額面通りの性能を発揮できなかった「誉」エンジン。その神話的側面を解体しつつ、エンジンという技術的結晶の中核部分(シリンダー・ピストン)とその開発の実際を披歴。そして「誉」が象徴する、中島飛行機と主要な関係者、日本の(軍事的)航空機技術・産業、さらには日本軍の航空機政策、それらの特徴や問題性を明らかにしていく。比較のために、中島とは異なる社風を持つ三菱重工や、欧米各社のエンジン開発体制などについても紹介される。2021/11/13

m_syo

4
500ページ近い本だが、専門的な技術に偏ることなく、今日にまでつながる組織上の問題点を指摘するなど、非常に面白かった。最先端技術の兵器は、国の総合的な力が無いと育たないのだと実感。それを実現できる技術的な蓄積も実力もなく、背伸びしたエンジンだった。そのような惨状を、当時の指導者たちは認識せずに戦争に踏み切ったという事実が空恐ろしい。「もし紫電改が間に合っていれば」と夢のような話をした本もあるが、それはハナから無理だったということだ。2015/09/20

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