内容説明
20世紀初頭のカリフォルニア州を舞台に始まった日本人移民の排斥は、長らく2国間関係の懸案事項だった。その歴史を膨大な資料をもとに丹念にたどり、移民問題が日米関係に与えた影響、また日米関係が移民問題に与えた影響を読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小鈴
17
『吉田茂の自問(「日本外交の過誤」調書)』の中で当時の外交官達が排日移民法の成立で米国への反感を吐露し、陸軍よりも反米に傾く姿を見て気になっていたが、成立過程を知ることでその気持ちを余すことなく知ることができた。国内世論の人種差別的な熱狂で制定されたわけでは「ない」。一部にはそのような政治家や利益団体もいたが、選挙対策による集票効果や党内一致のために利害対立の少ないイシューであったがために利用されたに過ぎない。外交上の国益よりも国内政治の打算の結果であったが、その後の日米関係に与えた影響は多大であった。→2016/04/12
ミッキー
4
国益とパワーによって規定される国際関係が感情によって左右されることがある事例の分析。外交が外交官という専門家だけが扱う問題でなくなった現在こそ、広く読まれたらと思いました。参考になりました。2016/10/09
Sota
3
授業で読みました。外交と民主主義の接続をうまく調整するのはやはり難しい。トクヴィル的な問題を再確認できました。2017/05/25
カラコムル711
2
この排日運動が日米戦争の遠因になった重要な事件だとしている。アジア主義の勃興などに影響したのだろう。ただ、日本人は他のアジア人と同等にされたのが気にくわなかった訳で、そこにはアジア人に対する蔑視があった。ただどれだけ移民を受け入れるかは受け入れ国の主権の問題だ。戦前日本では同じ日本人の朝鮮人の本土への移入を制限していたくらいだ。アメリカ人の偏見を笑えない。米の議員は票が欲しくて民衆の偏見に与した。今でもこうした民衆を間違った方向に煽る危険な政治家がいる。 2017/09/29
Masako3
2
太平洋戦争前、既に日本人以外のアジア人種の排移民法を確立していた米国の、日本人移民が多い西海岸にて排日移民法は画策された。連邦政府はより外交が重要事項であったわけだが、政権を持つ共和党が汚職事件等で立場が弱体し、票田である西海岸の主張を呑むに至る。しかも当時の日本大使の書簡の一語に難癖をつけてラショナルを立てようとした。衝撃的なことにその一語は米国側の要請によって加えられたものにもかかわらず。当時、理想主義の米国に憧れていた坂の上の雲直後世代のの日本人の落胆は想像してあまりある。2016/05/13
-
- 電子書籍
- 絶対に勝てない魔王と戦うとかやってられ…
-
- 電子書籍
- 迂回融資