内容説明
花鳥風月を詠む優雅な趣味の世界――。これが俳句のイメージだろう。だが、日々の小さな発見を折に触れ書き留められるところにこそ、俳句本来の魅力がある。本書では、俳人にして単身赴任中のサラリーマンでもある著者が、「飯を作る」「会社で働く」「妻に会う」「病気で死ぬ」などさまざまな場面を切り取りつつ、俳句とともに暮らす生活を提案。平凡な日常をかけがえのない記憶として残すための俳句入門。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かごむし
26
50代サラリーマン俳人の書いた俳句エッセイ。俳人のみずみずしい感性を読めるのはもちろんだが、俳句の歴史、背景など、単なる思いつきではなく、俳句がよくわかる一冊となっている。また最後に置かれた、松尾芭蕉の一生について書かれた章は、同業者ならではの視点で面白かった。俳句は、一人でこもって作るものではなく、人に聞かせてその反応を楽しむものだそうである。この本を開くまでは、俳句なんて短かすぎるし、季語とか窮屈だから、自分は絶対やらないと思っていたけど、近くで句会があることを知り、行ってみようかと思うまでになった。2017/09/13
紫羊
20
神戸の岡本で単身赴任生活を送る俳人による、エッセイのような俳句論のような作品。家族と離れての生活の悲哀、ささやかな楽しみが、数々の俳人や彼らの残した秀句とともに語られる。生活に根ざした、読む者の心の滋養になるような良書。「飯を作る」「会社で働く」「散歩をする」「酒を飲む」などの章題も魅力的だ。2025/05/26
とよぽん
15
生活と芸術の重なりの、バランスの良い俳人だと思った。会社勤めをしながら30年余り俳句を作り続けている筆者の、日常の生活そのものが俳句の芸術世界に溶け込んでつながっているのだ。憧れる。私は30年余り教員をしているが、先輩の影響で俳句に親しむようになって十数年、投句などしてきた。しかし、仕事や雑事に紛れてここ数年は句作に向かえずにいる。小川軽舟さんの活躍に注目していきたい。2017/02/26
双海(ふたみ)
12
私も俳句とともに暮らしてみたい・・・!2020/02/09
袖崎いたる
10
夏目漱石を読むための俳句のお勉強のさわりとして読む。どうやら俳句は〈自己投入のための容器〉と〈生活実感の記録としてのメディア〉との捉え方ができるようで、俳句が優れてるのはその形式上の短さとのこと。その意味でうまく書けた句が、書いた当時の情景をすっと引き出させるのも我が身に思い当たる。ライクロフトよろしく生活圏を散歩する享楽へのアジテートといった所か。ところで、著者が「この本の読者は、中公新書のイメージからして既婚男性が多いのではないかと思う」(p63)とか書いてるけど、中公新書ってそういうイメージなのか?2017/02/05