内容説明
マネー、情報、資源を吸い寄せるために、一本の矢のように世界を貫くネットワーク、その呼び名は「ユニオンジャックの矢」。このネットワークを駆使した英国流の世界戦略が分かれば、日本の進むべき道も明らかになる。グローバル経済の潮目を読み続けてきた知の巨匠が、経験知(ミクロ)と世界史(マクロ)双方の視点から、英国と世界、そして日本とのつながりを立体化。経済の表層だけを見ても分からない、真の成長戦略を見通す。
※ユニオンジャックの矢……ロンドンを基点に、ドバイ、ベンガルール、シンガポール、シドニーへと伸びる一筋の直線を、英国のネットワーク力の象徴として表現したもの。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かずぼん
6
ドバイからインド、シンガポールを経てオーストラリアへと一直線に結ばれたユニオンジャックの矢という捉え方が刺激的であった。世界を把握するために、大きく捉えることの重要性もさることなながら、イギリスが歴史的にどうしてそのような世界的な関係に言及しているのかが歴史的な観点からも言及されて納得できた。ヨーロッパにおける歴史的な関係についてはあまりにも複雑すぎてなかなか理解するのが困難なのだが、少なくとも世界史を勉強するのとは違った気持ちで向き合えたので、少しは理解が積み重なったのではないかと思われる。2021/09/17
Yoshihiro Yamamoto
4
A 未来塾や多摩大学でのリレー講座で一度は聴いた話の総決算だ。かつてイギリスが植民地としたドバイ、バンガルール、シンガポール、シドニーへシティから繋がる一本の矢。中東の金融センーターのドバイ、大華僑圏の金融センターのシンガポール、IT技術と資源の中核であるバンガルールとシドニー。金と資金とIT技術を結びつけて「金融とエンジニアリング」をバイタル産業とするイギリスの構図が理解できる。AIIBへいち早く加入したのも歴史的理由がある。かつての植民地と良好な関係を築いていられる英国と日本を対比せずにはいられない。2017/08/12
Kentaro
2
ダイジェスト版からの感想 英国では、金融とエンジニアリングの組み合わせが付加価値を創出するという共通認識がある。その活動を支えるのが、イギリス連邦の存在だ。加盟52か国は、「English speaking people」と称され公用語は英語を話し、英国法を共有し、ラグビー、サッカー、テニス、クリケットなどの英国発のスポーツなどの文化を共有する。英連邦はまさに英国のソフトパワーを象徴するネットワークなのである。ドバイ、ベンガルール、シンガポール、シドニーと英国を結ぶ“矢”がユニオンジャックの矢である。2018/03/09
るるぴん
2
英国の辿ってきた道と今後の展開について、ざっくりと総括した本。 七つの海を支配した大英帝国の面影はないが、各国とのネットワークは切れていなくて、影響力を残しているのは何故なのか。影響力を及ぼしている拠点をつなぐと、まるでユニオンジャックから矢を射たような形にる。そこに英国のしたたかさと強さを感じるし、今後の展開に注目すべき、みたいな内容。英国人のユーモア感覚、現実と対話しながら粘り強く回答を求めていく意思。理念に走るのではなく、程よく妥協していく柔軟さ。歴史の知恵で軽妙に落としどころを見いだすしなやかさ。2017/11/20
inuwanwan
1
大航海時代に始まり、産業革命を経て繁栄を築き、やがて衰退に向かいつつも世界中にその影響力を残し、かつネットワーク力・エンジニアリング力で今なお影の実力国として君臨する大英帝国の姿を、地理歴史・政治・宗教・メンタリティなどの各方面から浮かび上がらせている。 著者自身が英国が好きと言いつつ、歴史的暗黒面にもスポットを当てるなど、今まで知らなかった英国の姿を垣間見ることが出来、またかつてモノづくり大国だった日本が歩むべき道も示唆されており、勉強になった。2019/07/22