内容説明
海町、高校二年生、夏。漁師の親父が溺れている「何か」を助けて行方不明になったあの日、浜辺にひとりの少女が打ち上げられた。太ももから一体化した足。黒光りするウロコ。銀色の尾――それは地上に憧れ、溺れた人魚の少女だった。走れない陸上部の幼馴染、シオ。波にのれないサーファーの親友、ウミ。そして、親父の死を受け入れられない、おれ。海に帰れなくなった人魚・ユーユとの出会いが、あの忘れられない夏の始まりだった。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の七月隆文氏が激賞した、感動の青春ストーリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
黒瀬
127
高校2年の夏、漁師である父は荒れ狂う海から何かを助けて行方不明になった。それは住処に帰れなくなった幼い人魚。海辺という舞台に負けない瑞々しさが文章から伝わり、大人になって思い返す『あの夏のできごと』を体現した青春小説でした。生まれも育ちも大嫌いな俺。走れなくなった陸上部の幼馴染、シオ。波に乗れなくなったサーファーの親友、ウミ。もし、あの夏に彼らが人魚に出会わなかったら。そう思うのが恐ろしく感じられるほど人魚・ユーユの存在は大きかった。エピローグがまた良いんだコレが。 2020/09/06
散文の詞
126
人魚と一緒に暮らす? あらすじを読んでから読み出したのですが、会話がとにかく、ふざけてるというか、すごいです。これで小説になるのかと、ある意味感心しました。 とはいえ、青春小説としてみたら、ある程度成功しているのではないでしょうか。 悩みを抱えた少年少女の姿が、いきいきと描かれています。 全体的には他愛もない話なんですが、青春ってこんなもんですもんね。 ところで、クラゲを出してぶつける特技は、想像しただけでゾッとしました。 2020/09/28
おたけஐ೨💕🥒🍅レビューはボチボチと…
75
83/100点 初読みの作家さんです。父親が命を懸けて助けた人魚と、一緒に過ごしたひと夏の青春の思い出を描いたファンタジー。それぞれに悩みを抱えた3人の高校生が、仲間たちや人魚のユーユと過ごす中で自分自身と向き合い、それぞれの道を歩み出して行く姿が、読んでいて気持ち良かったです。また主人公のアサとユーユの掛け合いが、何とも言えないぐらい微笑ましかったです。そんなアホな、ありえないやろっていう設定の他愛もない物語ですが、自分には愛おしい一冊でした。2017/09/21
おかだ
61
サクッと楽しめた。漁師の父が命懸けで救った子供は、人魚だった!高校生のアサが人魚と過ごすひと夏の青春物語。お父さん行方不明になっちゃってるし、ひとりひとりが悩みを抱えていて沈鬱なムードになってもおかしくないのに、カラッと明るく前向きな感じ。登場人物達の軽快なやり取りのおかげでテンポ良く読める。クライマックスのシリアスモードとラストの爽快感が心に残った。良くも悪くもとてもアニメっぽい作品で、読んでいると作画が浮かぶようだった。ラストのアレは一粒残しておいて指輪に加工すれば良かったよね。2018/05/09
よっち
46
漁師の親父が溺れている「何か」を助けて行方不明になったあの日、浜辺に打ち上げられ海に帰れなくなった人魚・ユーユ。彼女との出会いが海町に住む高校二年生のアサたちを変えてゆく青春小説。行方不明になった父に反発していたアサ、走れない陸上部の幼馴染・シオ、波にのれないサーファーの親友・ウミ。そして陸上での生活を満喫してはいるけれど、海に帰りたいと願うユーユ。彼女との出会いをきっかけに彼らが自らの悩みに向き合い答えを見出してゆく連作短編的な構成で、それぞれが選んだ未来でも彼らの確かな絆を感じられる素敵な物語でした。2017/09/17




