ブラック部活動 - 子どもと先生の苦しみに向き合う

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ブラック部活動 - 子どもと先生の苦しみに向き合う

  • 著者名:内田良
  • 価格 ¥1,540(本体¥1,400)
  • 東洋館出版社(2017/08発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784491033334

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内容説明

生徒の「自主的、自発的な参加」に基づく部活動。それはこれまで、「部活動を通した成長」「能力の向上」「友だちとの深い結びつき」など、教育的な文脈で語られてきた。
しかし、統計データや教師の声を繙いていくと、「子どもの成長のため」を免罪符に、大きな矛盾や教員の負担が覆い隠されていることが明らかになる。

教育課程外の活動である部活動は、本来教員の業務ではない。にもかかわらず、「教師が部活顧問をするのは当然」と見なされ、強制的に割り振る学校が大半。早朝から夜まで、土日も休まず活動する部活は多い。日本中の学校で行われている部活動のほとんどが、教師がボランティアで行う「サービス残業」に他ならない。
また、自主的な活動であるはずの部活動への「全員加入」を強制する、自治体・学校も決して少なくない。
法的・制度的な位置づけが曖昧なのに、子ども・教師の両方が加入を強制され、そのことに疑問を抱かない。保護者も「当然のもの」として教師に顧問として長時間の活動を求める。そのような部活動のモデルで成長していく子どもは、このような部活動のあり方を当たり前に思い、再生産していくことになる。

「教育」「子どものため」という題目の裏で何が起きているのか。統計データや子ども・教師の声の解釈から、部活動のリアルと、部活動を取り巻く社会の構造が見えてくる。ほんとうに自発的で、過度の負担のない部活動へ向かうための、問題提起の書。



●部活の加熱化を示す大会数増

●部活動は教師のやりがい搾取?

●「自主的な活動」なのに全員強制

●顧問の「無償奉仕」を求める保護者

●週三回でも「部活動の教育効果」は見込める!

目次

はじめに
1 部活やめたい
2 生徒だけでなく先生も
3 部活は楽しい!:「強制」と「過熱」から考える
4 本書の諸前提:「エビデンス」と「4つの基礎的視座」から運動部・文化部をよりよいものに


第1章 「グレーゾーン」を見える化する
1 「なぜ廊下を走るの?」中学生の訴え
2 「自分だけ外を走ればいい!」
3 「グレーゾーン」としての部活動
4 無法地帯のさまざまな問題と矛盾
5 部活動は「教育課程外」の活動
6 「授業」とのちがいから「部活動」を理解する
7 「スポーツクラブ」や「学習塾」とのちがいから「部活動」を理解する


第2章 自主的だから過熱する――盛り上がり、そして降りられなくなる
1 学校はトップアスリート養成機関?
2 東京オリンピックはもっと盛大に:勝つことに対して高まる期待
3 理想と現実のギャップ
4 部活は麻薬
5 10年間で部活動の指導時間が突出して増加
6 組み体操の巨大化と部活動の過熱との共通点
7 自主的だから過熱する
8 部活動に全国大会がなかった頃
9 部活動が「評価」される 過熱の背景にあるもの


第3章 自主的なのに強制される――矛盾に巻き込まれ、苦悩する
1 大きな勘違い
2 生徒の強制入部
3 部活動指導は教員の仕事なのか?
4 実現不可能な職務命令
5 「居場所」の論理と「競争」の論理:部活動の存在意義は「機会保障」にある
6 競争の論理の見えにくさ
【COLUMN】Twitter発、世間を動かした「部活動の正論」


第4章 強いられる「全員顧問」の苦しみ
1 土日も出勤:「早く負けてほしい」
2 自主的に土日がつぶれていく
3 「部活未亡人」:過労を嘆く妻たちの声
4 若い先生たちの過重負担
5 全員顧問「制度」とは?
6 全員顧問制度の拡大とその背景
7 部活動で先生が「評価」される


第5章 教員の働き方改革――無法地帯における長時間労働
1 教育は無限、教員は有限
2 在校12時間 多くが「過労死ライン」超える
3 休みなき教員の一日
4 一日の休憩時間はたったの10分
5 先生には夏休みがある?
6 夏休みも残業、土日出勤
7 労働基準法の「休憩時間」が確保されていない違法状態
8 無理矢理の休憩時間設定
9 教員の半数は「休憩時間数を知らない」
10 諸悪の根源「給特法」
11 休まないことが美化される!?
【COLUMN】部活動の法的根拠を探るなかで見えてきたこと


第6章 素人が顧問
1 未経験顧問が雪崩に巻き込まれて死亡
2 ボールにさわったことがあればOK
3 素人顧問が語る苦悩
4 部活動好きだった先生の挫折
5 次善の策として顧問を引き受ける


第7章 過剰な練習、事故、暴力――苦しむ生徒の姿
1 守られなかった「週2休」の指針
2 文科省が本気を出した
3 生徒の部活動時間:最大は千葉県の1121分/週
4 外部指導者は救世主か
5 外部指導者は生徒の負荷を増大させる?
6 部活動を「やめさせない」圧力
7 「内申」という束縛の欺瞞
8 部活動における事故
9 顧問からの暴力
【COLUMN】 スポットの当たりにくい小学校の部活動


第8章 先生たちが立ち上がった! 
1 職員室の当たり前を打ち壊す
2 「部活問題対策プロジェクト」の誕生
3 既存の組合を超えた活動
ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きみたけ

64
著者は日本教育社会学会理事、日本子ども安全学会理事で名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授の内田良先生。「強制」と「過熱化」に満ちた部活における現状の問題について、教育現場のたくさんの方々から苦悩の体験談や実情を踏まえ、その解決策と未来の展望についてまとめた一冊。月平均90時間の残業という「過労死レベル」の学校の先生の勤務実態を詳らかにしていています。その主な要因である部活動について、これは勤務認定に値すると個人的には思います。この時代、部活動が強制活動なのはもうナンセンスですね。。2025/04/02

たまきら

42
娘が中一になってワクワクしながら部活をはじめ、10月に疲れ切って退部するまでを思い出しました。非常に強いチームを維持するため「勝つため」練習や遠征に追われた日々。まるで一位でなければ許されないような状況でした。娘ですら疲れ切っていたのですから、先生へのプレッシャーはもっと強かったのではないでしょうか。楽しめない時間を強制されるぐらい馬鹿らしいことはありません。人材を育てるというよりも名声のための歯車のように先生や生徒を消費しているような部活はどうなんでしょう…?2025/05/08

38
性善説を拠り所とするシステムは早晩崩壊するというのがよくわかる。巻末の、声をあげた先生たちによる座談会は読ませるものがあった。教諭の本分は授業。授業を正当に評価する仕組みはできないものか。2023/03/05

マッキー

23
タイトルが気になったので読んでみた。確かに、将来プロになるわけでもないし一生その競技で食べていくわけでもない。だから部の実績よりも「楽しい」と思える環境を構築することがまず第一にあるのではないかと思える。そのためには週に4~5回の活動にとどめ、教師が顧問を務めやすくする形をとり、それ以上の練習を求めたいのであればスポーツクラブや教室に通うべきであると私は感じる。あくまで「自主的な活動」であるから、体罰や親の介入なんて、もってのほか。甲子園やインターハイに行くような部以外は、まったりのんびり行こう。2018/02/18

Riopapa

21
この提案を実行に移すとなると,教員と保護者からの抵抗がすごいだろうということは予想できる。パラダイムシフトを起こす必要がある。2017/10/09

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