内容説明
日本の植民地下にあった時代に朝鮮近代文学は生まれた。日本語とハングルとの格闘を通して作品を書いた文学者――腹話術師たちの活動に豊富な引用で光を当てる、ユニークな試み!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
渡邊利道
3
日本占領下の朝鮮半島で、近代文学を作った韓国人作家たちを、文学言語・鉄道・標準語と方言、裁判、英語、エロス、結婚、郵便制度、食べ物、「韓国語」、金、日本語、八月十五日の解放といった主題で論じる。対象作家はほぼ知らないが論旨が明快で引用が多く面白かった。日本語で書いた朝鮮人作家たちは祖国を裏切ったものとされたが、けっしてそうではなかったという話は、一部私も読んだことがある作家でいろいろと感慨深かった。韓国語で書いた作家も、その小説の雛型は日本語で構想したのだとか。あとはモダニティの話。2017/07/01
てぬぐひ
1
日本語をはじめとして「近代」に直面して、そこから新たに創造した文学、韓国語についての論考。小説のエクリチュール創造過程に興味を持った。 日韓二つの言語で腹話術師のように発言する当時の作家の存在を背信ではなくむしろ帝国の秩序転覆の可能性と著者は語る。敵の刃をとらえて敵を切るきわどい精神の曲芸…親日と断罪するだけでは見えなくなる過去もあるように思う。 最終章の許俊「残灯」読みたい。訳者あとがきにあった歴史修正主義者への憂慮、悲しい。2017/07/01
Sachiko
0
タイトルからいったいどんな内容なのかと思っていたが、副題のとおり、日本の植民地時代に書かれた朝鮮の近代小説を様々な側面から見た本だった。朝鮮で書かれたものだけでなく、日本に来た朝鮮人小説家が書いたものもある。日本語で書かれているものも、朝鮮語で書かれているが日本語や英語が多用されているものもある。当時の社会の様子を知ることができるだけでなく、表現方法という点でも興味深い本だった。2024/01/04