内容説明
2012年、パソコンを乗っ取られた人々が、遠隔操作で飛行機の爆破予告や小学校の襲撃予告などを書いたことにされ、うち4人が誤認逮捕されるという事件が起きた。この通称「PC遠隔操作事件」の犯人・片山祐輔は、そもそもなぜ一文の得にもならないこのような事件を引き起こさなければならなかったのか? なぜ警察・検察・メディアは、片山の情報発信にミスリードされ続けたのか? 読んだ人の腹にズシンとくる、560ページ52万字。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
43
2014ー15年に世間を騒がせたPC遠隔操作事件の顛末を弁護士や警察の取材をもとにまとめたもの。江ノ島の猫の首輪に証拠を残したりマスコミにメールを送りつけたり、劇場型愉快犯の典型。犯人は否認していたが、仮釈放後に自分で偽メールを送って全ての嘘が露呈した顛末は衝撃的だったな〜。4人もの無実の人(知らぬ間に遠隔操作された人)が誤認逮捕されていた方が大問題だったのに、その事は吹き飛んでしまいました。しかし、時の流れ(とりわけネット社会)は速く、この話がすでに完全な昔話になってしまっているのが怖く感じました。2017/09/17
おかむら
34
500p越えの超ボリューミーなノンフ。終わってみればネットオタクの愉快犯によるチンケな脅迫事件だったわけだけど、複数の誤認逮捕からの事件発覚、真犯人からの挑戦状、容疑者逮捕、冤罪主張、裁判途中のどんでん返しと、小説より面白い流れを詳細に辿る。ただいかんせん詳細すぎて長い! 警察や司法やマスコミの問題点への指摘がくどい。もう少しコンパクトに整理してくれれば。そこが惜しい。犯人の動機に迫る章が面白いので、ここはもっと深掘りしてほしかった。しかしこいつ、出所したらまたなんかやりそう…。2017/07/28
奥澤啓
27
ぐんぐん引き込まれるようにして読み終える。事件の概略は覚えていたけれど、釈然としなかったのが動機。中流の上位の恵まれた生い立ちにもかかわらず、犯人は激しいイジメにあっていたという気の毒な少年時代があった。リアルで情緒的な人との交流が苦手な者が、パソコンの世界だけでしか生きられなかった時期も。そして、ネットでの逸脱行為が自制できなくなる恐さ。単なる幼稚な愉快犯なのだが、多くの人を巻き込んでしまった。重厚で読み応えのあるノンフィクション。筆力に脱帽。神保哲生という人はすごいジャーナリストだと感じ入る。2017/07/25
緋莢
22
2012年。ニューヨーク行の飛行機への爆破予告、横浜市内の小学校への襲撃予告、さらに似たような殺害・爆破予告が日本中で14件起こっていた。ログのIPアドレスから 4人の男性が逮捕されるが、実は彼らのパソコンは遠隔操作で利用されていた。やがて、片山祐輔という男性が逮捕されるが、彼が犯人だという証拠がなく、保釈される。膠着するかに見えた事件は、思わぬ展開になり・・・2017/10/09
くるぶしふくらはぎ
14
普通に生活していた人が、ある朝突然警察に連行されて過酷な尋問で犯人扱いされる。かつて、いや、つい最近の事件である。PCを乗っ取られたことに気がつかず、警察も信じてくれず、4人の被害者の中には犯行を認めてしまった人が二人もいる。完全なる冤罪。そして真犯人もまた冤罪を訴え、一度は、大弁護団の後押しもあり無実を勝ち取る寸前に、自ら墓穴を掘る失態を侵してしまう訳だが…。単なる幼稚な悪戯書き気分の犯行が、センセーショナルに、また他人の人生を狂わす犯行となる。示唆が多過ぎて感想が間に合わない・・・。2017/12/30