内容説明
「友よ、お前は強い。だが、俺はどうしても勝たねばならぬ」帝を擁する奸雄・曹操孟徳と名門袁家の王者・袁紹本初。中原の覇者となり天下を望むには、かつての友が最大の障壁となった。劉備、関羽、筍イク、筍攸、許緒、田豊、郭図、文醜、顔良、英雄たちが、荒ぶり謀る三國志前半の大決戦「官渡の戦い」を描いた長編歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あも
66
三国志が好き。どれぐらいかと言うと、小学生の頃お小遣いを貯めてちくま文庫の正史三国志(1500円×8冊)を買い、自分で人物辞典と年表を作り、それは今でも更新している。大人になってからは国内の論文を探して読み漁り、中国の民間資料を探して読めない中国語を必死で解読し虚実定かならぬ家系図や伝承を収集する程。ちなみに本書は、赤壁の戦いと比して、小さく扱われがちだが歴史上の重要な転換点である「官渡の戦い」を魏の曹操と友でありライバルでもある袁紹の関係性を中心に描く。小説としては真面目すぎて好感度は持てるものの凡作。2017/09/18
ポチ
54
曹操が中原の覇者になった大決戦、官渡の戦い。袁紹がただのボンボンでは無く、一大勢力を築き上げた英雄としているところが良かった。曹操が絶体絶命の危機の中、郭図の裏切りで助かる…。子供の頃から支えていた袁紹を裏切る郭図!なぜ?それが良く分からなかったが、まあまあ面白かった。2017/09/30
ren5000
34
吉川さんを読み始めたきっかけになった三国志シリーズなんだけど、期待が大きかった分物足りなかった。曹操の大出世のきっかけになった官渡の戦いだけれど新解釈のためなのか曹操があまりにも精神的に弱っちくてなんか受け入れ難かったのが原因なのかもしれない。2017/11/08
つみれ
31
これは三国志に相当精通していなければおもしろさが伝わりにくい作品であろう。キーとなるのは郭図だ。袁紹の参謀の一人だが、その献策のほぼ全てが裏目に出、一般的には官渡の戦犯とされる人物である。その彼が実は早いうちに袁紹を裏切っていて、曹操にとって有利になる策を提案し続けていたというのが筋である。郭図の献策のまずさをこの方向から裏付けようとしたところが新しいのだが、実にマニアックな新説といってよい。この作者の文章はよく言えば平易で分かりやすいのだが、どうにも野暮ったく、歴史ものらしい重厚さを持たないのが残念だ。2017/11/03
竹園和明
30
三国志の初期、反董卓軍として共に闘った袁紹本初と曹操孟徳が袂を分かち闘ったのが官渡の戦い。名門・袁家の袁紹を戦力では劣る成上がり者曹操が敗り、驀進して行くきっかけたなった重要な戦だ。二人に絡む第三勢力・劉備を意識の隅に置きつつ組立てる戦略。仁を重んじるも先見にやや疎い袁紹と覇者の気質に長ける曹操。子飼いの郭図の企てなど夢想だにしなかった袁紹は、やはり生き馬の目を抜く戦時には向かない器だったのか。名門が持つ王家の威光も戦時では全く役に立たない。瞬時の判断と覚悟。曹操に在って袁紹に無かったものはそれだ。2018/03/18