内容説明
魔導と科学が共存する世界で――。
魔導が衰退し、それに代わる科学技術が発達した世界。魔導師の存在が稀少なものとなるなか、天然の魔力鉱石から魔力を抽出する「発魔炉」の登場により、人々は依然として魔力の恩恵を享受していた。
小国ローゼンブルクのマフィア「ヴィルトハイムファミリー」の構成員である特殊交渉人ブルクハルトのもとに、とある任務が舞い込む。それは近い将来、魔力鉱石が枯渇するという『魔力危機』に端を発する国家プロジェクト――魔力鉱石ではなく、魔力を自己生成する魔導師から直接抽出するという「次世代型発魔炉」の開発にまつわるものだった。「肉体的苦痛」を発魔条件として莫大な魔力を生み出すことができる『トネリコの蛇』の末裔の少女、ヘレナ・ヘレーゼを「炉心」とする次世代型の長期運用。弱者を守る古きマフィアの教えに感銘を受け、組織の誰よりも騎士道精神を重んじてきたブルクハルトは、罪なき少女を痛めつけなければならないことに苦悩しながらも最良の手段を模索していく。
イラストは『Wonderland Wars』や『LORD of VERMILION』を手がける須田彩加が担当! 第11回小学館ライトノベル大賞審査員特別賞受賞作。
※「ガ報」付き!
※ガガガ10周年電子特典!シリーズ既刊すべてのカバーイラスト付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まりも
41
魔導が衰退し、科学技術が発達した世界。拷問官のブルクハルトにマフィアのボスから任務が与えられるところから始まる物語。悪くない。救いようのない世界に漂うバイオレンスかつハードで血生臭い空気。これはガガガらしい作品やな。緊迫感と絶望感、そしてそこからの魅せ方の上手さ、暗闇の中で見える光の差し込み具合は自分好みでとても良かったと思う。ただ全体的に冗長でページ数の割に密度が低いように感じました。多分ペース配分ミスかな。こういうアクの強い作品は大好きだし、十分楽しめたので著者の今後も期待したい。次回作も待ってます。2017/07/27
ましゃ
35
帯に「凄惨な描写が物議を醸した暗黒小説‼︎」とあり気になった作品。主人公の拷問官に与えられた任務、肉体的苦痛によって莫大な魔力を生み出す少女を痛めつけること…。拷問官として「人が死なない程度に苦痛を与え白状させる事」を信条としているのに、罪なき少女を肉体的苦痛のために痛めつけなければならない。世界を救うため…また少女の同意も得ている上で1人の少女を犠牲していいのか、という事に葛藤していく作品です。決して猟奇的な内容ではない。最後の選択は主人公の拷問官としての正義がみれて、個人的には良かったように思う。2018/02/12
よっち
35
科学技術が発達しながら魔力を抽出する発魔炉により依然として魔力の恩恵を享受する世界。マフィアの特殊交渉人ブルクハルトが、魔力枯渇危機を背景とした魔導師から直接抽出する次世代型発魔炉開発で少女ヘレナと出会う物語。肉体的苦痛で莫大な魔力を生み出すヘレナが志願したプロジェクト。つい利他的になりがちな彼女の身を案じ、拷問しか取り柄がないのに穏便な方法に活路を見出そうとするブルクハルト。それだけに急展開からの絶望感が半端なかったですが、それでも諦めずに最後まで戦い抜いてみせた二人が迎えた結末には救われる思いでした。2017/07/19
サケ太
17
魔導と科学の時代。魔力というエネルギーを膨大に発生させる少女。そのトリガーは痛み。マフィアの拷問官ブルクハルトは地位のために効率的にエネルギーを取り出す方法を検討することになった。ガガガ文庫らしい独特でダークな設定は面白い。少女との交流、ブルクハルトの葛藤。答えを見出だすも、時代の荒波に呑まれそうになる。そして、選択。良い作品だった。2017/08/14
たこやき
14
苦痛と引き換えに、莫大な魔力を生み出す女性・ヘレナ。彼女を痛めつける役を仰せつかったのは、マフィアの拷問官・ブルクハルト。「凄惨な描写」とあるが、それ自体はあまり感じず、むしろ、ブルクハルトの苦悩に目が行った。裏社会の人間として敵を殺すことも厭わないが、しかし、そこには筋を通す。しかし、ヘレナに対する行動は、拷問ではなくただの虐待。そんな苦悩とは裏腹に、いかに「効率よく」苦痛を続けさせるかを考察する研究者たち。終盤がやや唐突な感はあるが、裏表関係のない常識の違い、その中の苦悩はなかなか読みごたえがあった。2017/10/21