内容説明
死にゆく母を見まもる日々、私は悪いことでもするように、そっとひとつ母の額にくちづけた。そしてある日、母はかすかに「あした……」とつぶやく。透明な悲しみに満ちた表題作「母の死」。年の離れた少女・妙子との純粋無垢な愛の交流を、淡々と描く「郊外 その二」など八篇を収録。漱石が絶賛し、戦前・戦後を通じてよみつがれてきたロングセラー『銀の匙』の作家・中勘助の珠玉作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
53
「緑もえたつ野のなかに、私は頬杖をついてうっとりと陽炎に酔っている。見る目まばゆく咲きみだれたきんぽうげは山風がくるとみんないちどに蝶々になってちりちりと口つけあう(裾野)」ちくま文庫が冒険的なアンソロジーを編んだことがあって、乱歩や谷崎の間に中勘助の名を見たとき、歓楽街をさ迷っている幼子を目にした心持ちだったw編者の七北数人はそれを狙って組んでいて、解説で中勘助は損をしていると述べる。有名になりすぎた『銀の匙』のイメージでしか語られず、他の作品が読まれていない、これは読み手にとっても大きな損失である、と2017/01/23
まさげ
3
風景が浮かんでくるような美しい文章でした。再読します。2014/10/12
たぬ
1
★32016/12/23
糸
1
命日にて再読。2013/05/03
asuka120
0
半分ほど未読2013/11/16