内容説明
仕事も家族も犠牲にし、禁止薬物に手を出してまで、なぜ彼らは異形の巨躯にこだわるのか。 人間の意識の深淵に迫る。 文春ベスト・スポーツノンフィクション第1位。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
リキヨシオ
23
色物として見てしまうボディビルの世界が単純ではない事が分かって面白かった。賞金制の大会やプロ制度自体がないアマチュアがメインの日本ボディビル。趣味や自己満足といった自己表現の側面が強いけど、彼らの目標は筋肉の肥大化と理想の肉体の追求。理想の肉体=健康的な肉体とは異なり、筋肉の肥大化=異形化を求め、食生活、結婚生活、社会生活など多くを犠牲にして体を極限まで追い込むトレーニングを課す姿には何かに憑依的なものも感じる。さらに一部ではドーピングで寿命を縮めてまで筋肉の肥大化を求めるビルダーも少なからず存在する。2015/06/23
ひろ☆
22
ボディビルダーの世界。他のスポーツや格闘技と違って、自己満足になってしまうのかな。お金と時間、労力を費やして、人間の限界を超える。ステロイドに手を出してしまう、ビルダーの気持ちも分かる。だって、飲むだけで、筋肉が数センチもアップするのなら。。2015/01/19
こうせいパパ
18
大変面白かった。ボディビルに取り憑かれた人々の話。年を取っても体を鍛え続ける人。大きな筋肉を手に入れるべく健康被害覚悟でステロイドに手を染める人。自分自身筋トレが好きなので、筋肉が何よりも最優先となる彼らの思いはよく理解できる。 「果てなき渇望」というタイトルは納得。2018/12/05
baboocon
17
千田琢哉さんの推薦本から。ボディビルダーに対する自分のイメージというのは、本書でもたびたび言及されるように、気持ち悪いとか、あそこまでムキムキになるのはちょっと…というのが正直なところだった。本書を読んでもそのイメージは変わらないが(変わらんのかい!)、コンテストで入賞するような筋肉をまとうことは、まず身体的素質が重要でありなろうと思ってもなれるものではないこと、ただトレーニングしているだけでも決してできないことはわかった。本書に登場する人々が、ボディビルのコンテストで勝つために、どれだけ(続)2022/04/07
ジョン
17
「生理がある内は、まだ甘い」。女性ビルダーのこの言葉に衝撃を受けた。さながらギリシャ彫刻、あるいは鋳鉄の像を思わせるボディビルダーの肉体美は、そういった性別を超えた先にあった。そしてそこに行き着くためには、生活のすべてを筋肉に捧げなければいけない。そういった衝撃の連続。「コンテスト」「女子ビルダー」「禁止薬物」「生涯をかけて」の四部構成。中でもやはり圧巻は「禁止薬物」。まさにタイトルに偽りなしの「果てなき渇望」。遺伝的に勝る欧米人に勝つために薬に手を出さざるを得ない彼を、誰も否定できないだろう。すごい。2017/07/29