内容説明
帆船という“劇場”で巻き起こる人間ドラマ。
海を愛する若者が生の歓びを求め、ブリガンティン型帆船<大いなる(グローセル・)眞晝(ミッタ-タ)>号に乗り込んで船出をする。
「無一物主義」という哲学思想をもつベルナールを船長に、フランソワ、ターナー、ケイン、女性のファビアン、そして日本人の私など11人のクルーは、ヨーロッパから日本を経由して、一路、太平洋へと航海を続ける。
やがて、南太平洋に入ると、荒れ狂う颶風(ぐふう)圏に突入していく中、嵐のさなかに恐るべき事件が起きてしまう。帆船の船内は、さながら芝居の劇場のように複雑な人間関係が入り組んで、それは悲劇への序章にふさわしい舞台だった。
辻作品らしい“詩とロマンの薫り”に満ち溢れた長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kthyk
15
冒頭の数学者エリーが披露する魔法陣を天体の音楽に変えようとする人間劇。舞台は世界周航を目論む、全長26mのブリガンティン型帆船。フランス人船長、イギリス、アメリカ、イタリア、インド、アルジェリア、タイのクルーと途中から参加した私を含め男女16人による<真晝への飛翔>。東京碇泊後、帆船の中のドラマ始まるが、太平洋南下航路は落日の神殿に集う神話劇の様相。しかし、ニューギニアに碇泊後サモア諸島で遭遇する颱風は物語を、<ガラスの球>の中の人間悲劇に変容する。それはあるがままの世界の崩壊、まさに現代の我々の悲劇だ。2021/02/19