内容説明
父の不在。愛犬の死。不妊の疑い。実家の片付け。神社の縁日。そして謎のカセットテープ。離婚した母とその娘との、繊細で緊張感ある関係を丁寧に描き出した表題作。死の淵にいる娘を為すすべもなく見守る父の苦悩を描く第155回芥川賞候補作「短冊流し」を併録。圧倒的描写力と研ぎ澄まされた想像力で紡ぎ出す新鋭の飛翔作二篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
146
バージニア・ウルフみたいに何も起こらない。小さな波紋だけ。親が親でなくなる瞬間、母親が母親でなくなる瞬間はあると思う。なんでもない日常に池の波紋みたいに一時の感情で大人気なくなる。すぐに忘れてしまう。水の匂い、子供の汗、蝉の声、においたつ夏の記憶が私も自分の記憶が甦るほど素晴らしい描写だ。友達と帰宅途中自分がなぜあんなことをしたのかわからない。買い物帰りの母が見てた。頬を撃たれ友達の前でお母さんに会うのがそんなに嫌なのと怒鳴られた。そうじゃない。あなたの気に入るオレでいるのが結構キツイんだよ。思い出した。2018/11/19
かみぶくろ
117
なにかしらのテーマがあって、作者が自分の考えなり思想なりを物語で表現する、ではなく、ただ私には世界がこう視えています、っていう宣言のような小説だった。全編通じて感覚的で、言葉で感想を表すのが難しいのだけど、スッと入ってきてハッとさせられる描写がとても多いように思う。温かみのある冷たさ、というか、水がとんがって刺さってくるというか。うん、やっぱり言葉にできない。2017/06/16
ぶんこ
65
淡々とした純文学を味わう。そして私には合わないと知る。どうも芥川賞関係は受賞、候補にかかわらず合わないと感じる作品が多い。胸の奥に解消できないモヤモヤを秘めているような(ひなた)の母親が理解できませんでした。夫は優しいし子供は可愛い。事故死した実の母へのわだかまりが感じられるので、モヤモヤはそれなのか?もう一遍は、綾音ちゃんへの切実さが感じられない両親。読んでいると私の中はモヤモヤだらけで終わりました。2017/11/22
ひめ
64
母と娘との関わりを淡々とつづってあるだけなのに、そこになんともいえない空気がそしてそれが不気味に感じられる作品でした。つかめそうでつかめない、そんな感じの本でした。2017/04/21
モルク
62
高橋弘希さんは『指の骨』『朝顔の日』以来の3作目。まだ若い作家さんだけどその感性に驚いたものだった。今回の『スイミングスクール』は日常の中に母親との思い出を交えながら淡々と語られる。文章に表れていない何か奥深いものを感じさせてくれる。もう一作芥川賞候補となった『短冊流し』幼い娘と二人暮らしの主人公。その娘が緊急入院、別れた妻も駆けつけ…ああ、これは続きが知りたい、いったいどうなったの? やっぱり好きな作家である。2017/04/11
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