内容説明
熾烈をきわめた沖縄戦体験者の証言記録は、これまでにも多く存在する。しかし、17年間、体験者と共に活動し、500名を超える人たちに寄り添いつつその声に耳を傾け続けた記録は、他にないのではないか。
本書の著者は、沖縄に生まれ育ち、自らも身内に沖縄戦の体験者をもつ臨床心理士で、自然のなりゆきのように沖縄戦を研究テーマとしてきた。
本書は、県内7地域で著者たちが創った「沖縄戦体験を語らう場」で、約10年間、837回開催された会の、2924時間に及ぶ音声記録の中から、一部をまとめて紹介したものである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナディ
51
語らいの場で沖縄戦での体験を語るまでに、どれだけの苦しみと悲しみを押し殺して生きてきたのだろう。逡巡しながら、葛藤しながら、自身の体験を語ることが、重く、胸に刺さる。亡くなった祖父はシベリア抑留されていた。その時の体験は一言も語らずに逝った。亡父は赤ん坊の時に、家族で命からがら満州から引き揚げてきた。残留孤児のニュースを我がことのようにみていた。そんな姿を思い出される。【戦争を考える】2017/08/08
かいゆう
27
『「あの戦争はいったい何だったのか」…虚しさ、怒り、愚かさ、残忍さ……いかなる形容詞もしっくりこない複雑な想いでした』私も著者と同じ複雑な想いでいっぱい。沖縄戦は、この太平洋戦争の全てが凝縮されたような戦争だった。今までたくさんの体験談を読んできたけれど、“話せない”という方の気持ちを、抱えているものの重さを、自分は今まで考えた事があっただろうか。話を聞かせてくださる方の苦しみを、“話す”という決心の大きさを、しっかりと胸に刻んで覚えておこうと思った。 2017/09/05
かおりんご
22
ちょっと思っていたのとは違った。沖縄での戦争体験をまとめているといえばそうなのだけど、それよりもあの時あの場所で戦争を体験した人たちに、語りの場を設けて交流することがメインな感じ。心理療法の一種に思えた。ハルさんの人との距離の取り方には、グッとくるものがあった。でも、最期は人を信じられるようになってよかったなと思う。2020/08/11
ぐり
3
傷ついた人から話を聞くために、研究とはいえ、これほどの年月をかけて取り組まれたことに感服した。聞き取りの内容と同等かそれ以上に、話し手(おじいおばあ)が話すにいたるまでのやりとりに字数を使っていて、それも読み応えがある。 それから人の語りを一面的に報じることへのジレンマも共有できた。平和学習で沖縄を訪れる人はこのジレンマこそ持ち帰るべきだ。2017/10/14
井坂 茜
3
臨床心理士である筆者が、沖縄戦の体験を本当は話したい・聞いてもらいたいと思っている人たちに寄り添い、やっと口にすることが出来た体験談をまとめた本。自分だけ生き残ってしまった事、疎開して地上戦を体験しなかった事、スパイと疑われて拷問を受けた事、兵士として人を殺めた事。思い出したくない事や、自分が加害者だと思ってしまう事を60年以上経ってやっと話せた人たち。そしてやっと話せて安心したように、亡くなる方も多いということ。先日のチビチリガマの件を考えると、体験者が減っていく中で戦争の傷をどう伝えていくべきなのか。2017/09/17
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