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内容説明
仏陀の死せる夜、デイアナの死する時、ネプチューンの北に一片の鱗あり……。偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。そして、その現場に立ち会おうと誘うのだが……。懐かしき大正の東京を舞台に、禍々しき精神の歪みを描き出した「白昼鬼語」など、日本における犯罪小説の原点となる、知る人ぞ知る秀作4編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
336
モダニスト谷崎の面目躍如たる1冊。乱歩が憧れたのも無理はない。今からすれば、むしろ古色蒼然たる趣きのように見えなくもないが、当時は時代の先陣を切っていたことだろう。早々にポーの『黄金虫』の暗号を取り入れるなど、探偵小説としての面白さもさることながら、そこには濃密なまでの耽美性が漂っている。4つの短篇を収めるが、白眉はやはり「白昼鬼語」だろう。読者に何か変だなと思わせつつ(それも実は作者の術中なのだが)、最後は見事に読者をも得体の知れない恐怖の余韻の中に連れて行ってしまうのだから。2014/09/20
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
167
他人の謎をあばくのは、さぞや胸のすくことでしょう。秘密はひみつのまま。あやしさは妖艶をつくります。 湯気にまぎれて夜気にまぎれて。 大量の人の足蹴にされる彼女の死骸は湯船の底に沈み、助けを求めてか私の脚を握るのです。紫水晶は澄んでペパアミントに玲瓏と輝くエメラルド。ふたつの美しい宝石は屍肉と骨を溶かしてさえ冷然と美しいままで。 欲を叶えて殺めるのは彼のヒロイン。死骸を胸にホトグラフィを一枚、艶然とにっこり。ああ、「恐ろしい物はすべて美しく、悪魔は神様と同じように荘厳」恐ろしさに、陶酔。2019/07/18
ehirano1
167
犯罪小説集というよりは怪奇犯罪小説で、怖いというよりも「気味悪い」といった印象なのですが、読み入ってしまいました。雰囲気が凄いんですよね。だからその雰囲気に飲み込まれながら読み続けざるを得なかった、という感じでした。2018/09/01
nobby
164
犯罪に至る過程や心情は実に哀しくも美しく何よりも耽美…そんな気持ちの数々、全く器質の無い僕には分からない♬だって里芋やオクラのぬらぬら嫌いじゃないけど、それよりナタデココのつるつるの方が好き。暗号謎解きは大好きで、もちろん紫ぶどうジュースよく飲むし気分リフレッシュ時の青フリスクはペパアミントってあれ!?いやいや、仕事での怠惰多いって訪問先近くに書店あれば寄り道するのは必然でなくあくまで偶然でしょ…「最低限やることはやってる」とか「いつでも携帯とれる」など私のようなビビりの心中の思いも信じて欲しいな…(笑)2020/01/10
黒瀬
146
日本の推理小説の発展に著しく貢献されたとする谷崎潤一郎氏の短・中編を四本収録。なかでも特筆すべきはやはり『白昼鬼語』だろう。手にした暗号文を元にこれから起こりうる殺人事件を見に行こうと宣う園村とそれに付き合わされる高橋。存分に語彙力を発揮しながらも軽妙洒脱なこの二人のやり取りだけでも永遠に読んでいられそうだ。しかし氏の本領は若かりし頃に至高の域に達していただろう艶めかしさ。特にp.142の「蛇がするするのた打ってでもいるような滑らかな波が這っているのである」という文は絵や写真よりも官能的な表現だ。2021/04/21