内容説明
余命六カ月――ガン告知を受けたソル電機社長の日向は、社員の梶間に自分を殺させる最期を選んだ。日向には、創業仲間だった梶間の父親を殺した過去があったのだ。梶間を殺人犯にさせない形で殺人を実行させるために、幹部候補を対象にした研修を準備する日向。彼の思惑通りに進むかに見えた時、ゲストに招いた女性・碓氷優佳の恐るべき推理が、計画を狂わせ始めた…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
271
末期ガンで余命半年宣言を受けた創業者日向社長が望んだのは、部下で幹部候補の梶間に殺されること。そんな思いを露知らず、梶間は日向社長の殺害を決意する。なぜ?梶間は知ったから。父親が日向社長に殺されたのだと!そう、互いにその決意に気付かずとも望むベクトルは同じ。そして舞台は整った❗いわゆる倒叙ミステリー。利害が一致し事件を待つのみなのに、不思議と邪魔する存在が!そう、『扉は閉ざされたまま』の観察眼天使、我らが碓氷優佳!読み手は「一体いつどこで気付いたの?」と貪るように読まされる!ああ、やっぱり一気読み‼️🙇2019/01/20
ナルピーチ
157
1作目で強烈なインパクトを与えた碓氷優佳のシリーズ第2弾!ガン告知を受け余命僅かと知ったソル電機社長の日向が最後に仕掛けた一大プロジェクト。それは過去に殺してしまった親友の息子に自身を殺害してもらう様に仕向ける事…。舞台を整え仕込みを終えた日向は思惑通りに殺される事ができるのか!?前作同様に読み応え抜群の面白さ。殺されたい男と殺したい男の駆引きの応酬。そこに碓氷が参戦するととんでもない事が起きてしまう。彼女の洞察力がとにかく凄い!あまりにも見事な推理に言う事なし。最後に待ち受ける結末が余韻を残してくれた。2023/04/15
ダイ@2019.11.2~一時休止
144
碓氷優佳その2。北山猛邦さんの猫柳十一弦を彷彿とさせる名探偵ぶり(といっても書いたのは石持さんの方が先ですが北山さんの方を先に読んだので・・・)。この終わり方は・・・どっち?。2015/11/18
🐾Yoko Omoto🐾
87
碓氷優佳シリーズ2作目。「扉は〜」に続く倒叙ミステリー。余命僅かな社長の日向が、かつての同士の息子である梶間の自分への復讐心と殺意を知り、その思いを遂げさせ、また彼が殺人犯にならぬよう綿密な計画を画策する…。という何とも奇異で倒錯している有り得ない設定(笑)石持ワールドに浸りきれば非常識は常識となり、特殊な倫理観が成立するから不思議だ。殺したい者と殺されたい者、双方の思惑が優佳の恐ろしいほどの洞察力と隙のない推理によって翻弄される。倒叙の醍醐味を堪能できる秀作。2013/09/05
おかむー
79
『倒叙』という分類名をこの作品で初めて知りました。要は『コロンボ』『古畑』といった犯人の殺人がまず描かれ、そのトリックを探偵役がいかに崩すかという内容なのだけれど、この作品は倒叙ミステリの変種なのだろう。なにしろ「自分を殺させようと環境を整える」側と「用意されている舞台と知らず殺そうと工夫する」側、さらに「その環境を崩して回る」探偵役なのだから。派手さや愉快さが少々弱く探偵役に魅力がないところは難ですが、過不足なく必要な状況を適正に描くしっかりした筆力で飽きさせない良質なミステリでした『よくできました』2014/04/25