内容説明
旧知の経営者仲間が集う「箱根会」の夜、中条夏子はかつての親友・黒羽姫乃を殺した。愛した男の命を奪った女の抹殺を自らの使命と信じて。証拠隠滅は完璧。さらに、死体が握る“カフスボタン”が予想外の人物へ疑いを向ける。夏子は完全犯罪を確信した。だが、ゲストの火山学者・碓氷優佳は姫乃が残したメッセージの意味を見逃さなかった。最後に笑う「彼女」は誰か……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ま~くん
86
碓氷優佳は大学で火山の研究をしている一般人。しかし、一旦事件に関わると正義感、道徳感とは無縁の推理で犯人を容赦なく追い詰めていく。そして事件を解決さえすればその後のことは全く知ったことではない。今までの探偵像とはちと違う所が最大の魅力かも。倒叙ミステリというジャンルは個人的に大好物なのだが、作者の力量が物凄く問われると思う。何せ読者に犯人が最初から開示されている。探偵(刑事)と犯人の心理戦は下手な作家だと読むに堪えない代物に成り下がってしまうだろう。中条、黒羽、親友同士の想い人に対する葛藤。滅茶怖過ぎた。2022/12/31
瑞佳
60
今回もとてもおもしろかった!『彼女が追ってくる』というタイトルからてっきり“彼女”とは優佳のことかと思ったけれど違ってた。でもなるほどこのタイトルは秀逸で、寒気がするほど腑に落ちる。倒叙形式で始まるコテージでの殺人。タイムリミット付きの警察未介入。そして登場人物による事件解明へのディスカッションの楽しさ。このお約束感がたまらないっ☆もののついでのようにふわりと真相を語り破滅に導く、可憐な死神のような優佳の微笑みが不気味。しかし加害者の最大の敵は、最後まで被害者なのであった。2017/01/22
ジンベエ親分
55
碓氷優佳シリーズ3本目。倒叙+クローズドサークルという形式を続けながら、よくまあ毎回これだけ変わったパターンを考えつくものだ。今回は犯人が殺人を犯した後で、被害者が握りしめていたカフスボタンの意味について推理する、というもの。今回積極的に探偵役を買って出るのは前作に登場した堀江比呂美で、優佳は妙に静かなのだが終盤で一気に畳みかけてくる。それにしても彼女の常人とはかけ離れた行動原理は、実は好きだ(笑) 勝負がついた後で優佳が夏子に言い放つ一言も彼女らしくて良い。キャラが完全に確立した感がある。面白い。2017/12/29
ヒロユキ
55
当然かのようにあまりにもあっさりと謎を解き明かす碓氷優佳。そして目の前の人間にあなたが死ぬ結末のほうが美しいと普通に言いきるのが怖すぎる。犯人vs探偵だけでなく犯人vs被害者、どこまでもまとわりつく彼女の執念、圧巻の結末でした。2015/10/16
かかな
53
一気読みした倒叙3部作。何となく前作までと読んだ感覚が違い、終章の半ばまではこれはイマイチかなあと思っていました。でもここまで読んでガッカリなわけがない。3作品とも碓氷優佳にしか作り上げられないラスト!彼女の目的は普通の探偵役とは違っていて、夏子の言葉を借りるなら『頭がいいのにポリシーがない』。本当に美しく怖い人です。順番通りに読んでいるからこそ分かる小ネタと、不自然さのないキャラが引き継ぎも見事。久しぶりに好みど真ん中なシリーズに出会えたのに、もう終わってしまった…(T_T)2016/08/23