内容説明
自由・平等・民主主義が憲法上保障された独立後のインドにおいて、カーストや不可触民差別というインド社会を特徴づけてきた問題はどのように変容しているのか?不可触民とされてきた人々をとりまく福祉政策の現状と課題、彼らに対する減ることのない暴力・差別行為に抗する組織的活動や地位向上運動から、カーストの現代的特質を論じる。デリーの清掃カースト・コミュニティにて行ってきたフィールドワークをもとにした意欲作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
21
インドのヒンズー教的価値観によって上下に序列化されたカースト制度の中でも、最下層の不可触民に位置づけられる清掃カースト(バールミーキ)に焦点を当て、これまでの福祉支援政策の取り組みの変遷とその効果の検証、首都デリーでの世帯別訪問調査によるバールミーキの社会経済的状況の把握、バールミーキの人々がカーストによる格差や不可触民差別から脱するための運動や、集団的アイデンティティの顕在化なども検証している。◇貴重なフィールドワーク。差別は表面的には見えにくくなってはいるものの、内面的には根強いものが窺える。2019/03/07
mittsko
7
デリーの被差別民、いわゆる「不可触民」のエスノグラフィー、社会人類学的モノグラフ。コンパクトかつ過不足ない構成、平明で要を得た文体、こりゃお手本級の一冊ですね! 最近、ヒンドゥー教ってなんだろうと考えて プロ的には一周回って結局「カースト」なんだよなぁ、という結論に至りつつある。カースト論の専門書はいくつかあるが、本書はそのなかでも入門書として使える初めての日本語単行本だ、とボクは思いましたね…(*´ω`*) もうちょっと正確に言うと、序論第1章が入門として、本論部が中級者向けとして。2019/12/13