内容説明
アメリカ海軍はペリーの他にもうひとつの艦隊を派遣していた。司令長官は海軍大尉ジョン・ロジャーズ。「ペリーとハリスのあいだ」の「ロジャーズ来航」は黙殺され、まさに「忘れられた黒船」といっていい。それはいったいなぜなのか? 本書は、これまでほとんど本格的に検証されることのなかった測量艦隊の、具体的な来日の経緯と国際環境について明らかにし、日本開国の事情をこれまでとは異なる観点で描きなおすことをめざす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Porco
24
中国への大圏航路(最短距離の航路)を開設するため、アメリカが派遣した北太平洋測量艦隊について書いています。ペリーが日米和親条約を結んだ後に日本を訪れ、同条約についての日米間での認識の違いに気づき、後のハリスによる条約改定につながった艦隊でもあるとのこと。幕末外交史に興味があるなら、ぜひ読まれるといい本だと思います。2017/12/21
BLACK無糖好き
16
幕末の日本開国史では、ペリー艦隊の来航と、ハリス総領事の来日が中心に論じられるが、その間に生じた北太平洋測量艦隊の「ロジャーズ来航」については、あまり注目されてこなかった。著者は十八世紀以降のアメリカの太平洋進出構想を分析し、ペリー艦隊と北太平洋測量艦隊の関係や、幕府の対応を一次史料を踏まえながら検討し、ロジャーズの申立てに対して幕府が下した重大な決断の背景や、北太平洋測量艦隊の活動が、なぜ歴史の上で忘れ去られたのかを解き明かしていく。従来の幕末日本開国史に新たな一面を加える極めて興味深い一冊。2017/08/07
穀雨
3
前半部分では18世紀以来のアメリカの北太平洋戦略の展開が、後半部分では黒船来航の1年後に海図作成のため日本沿岸を測量したアメリカ艦隊の軌跡が、それぞれ描かれている。いずれも黒船来航の裏面史といった趣で、知らないことばかりだったのでとても興味深く、勉強になった。2017/11/11
かろりめいと
0
本国のアメリカでも、幕府が大騒ぎした日本でも、歴史から忘れられたままであった「アメリカの北太平洋測量艦隊」というものがあった。太平洋版マニフェストデスティニー。ラッコからクジラへ。19世紀前半のアメリカの太平洋政策がよく分かりました。面白かった。2019/03/15