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内容説明
聖地エルサレムを異教徒たちから奪還すべく、中世ヨーロッパで構想された「十字軍」。それは神の名において行なわれる聖なる戦争であり、参加者に救済をもたらすとして、無数の人々を戦いに熱狂させ、ムスリムの大量虐殺をひきおこした。制度としての十字軍は16世紀末に終わりを迎えるが、9.11以降、現代まで続く一連のテロ事件と、それに対する欧米社会の反応は、「十字軍」が決して過去の歴史ではないことを明らかにしている。なぜ「聖戦」は繰り返すのか? 対立の根源にあるものとは? 十字軍の思想1700年の歴史を辿り、いまなお世界を脅かす確執の構造を解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
10
十字軍という事象そのものではなく、その底流を流れる思想に注目した一冊。聖地奪還という具体的な部分ではなく、異教徒の排斥や浄化、攻撃を目的とした、非常に排他的な思想を見ることで、中近世にとどまらない現代につながる問題として「十字軍」を捉えられる。またそうしたキリスト教側の 攻撃が、イスラム側に「反十字軍」の思想を生み、テロの時代へと誘う負の連鎖にも言及している。昨今の過激化する社会運動もそうだが、暴力に正義を与えてくれる思想ほど、甘美なものもないのであろう。2020/07/17
飯田一史
3
アルカイダやISにより蒸し返され、反イスラムの象徴とされる十字軍。それを生んだ前史から実態、ロマン化された一九世紀、そして現在に至るまでのイメージの変遷と通奏低音を探る。2019/01/05
刳森伸一
3
ナンバリングされた正規の十字軍だけでなく、その思想的背景に立脚して、古代ローマから現代までの十字軍なるものの変種と変容を描き出す。近現代の「十字軍」についてはやや整理しきれていない印象を受けるが、少なくとも五章の「”新しいイスラエル”アメリカ」まではとても勉強になった。2017/06/28
sakesage
1
コンパクトにまとめられた本書には、これからも何度か参照することになるだろう点を綴っていて興味深い。911テロの後、ブッシュが世界の泥沼に落としこんだアフガンへの侵略も、「十字軍」思想を大義名分に打ち出し、結果として未だにISを含めた世界の混沌と反発は終息していない。2019/03/24
Akira Suzuki
0
読みながら線を引きまくって、メモを書き付けながら読了。学ぶことが多い本であった。この本の内容を知らずにこれまで世界に起こっていることを表層だけ見ていたことを恥ずかしく思ったくらいである。 十字軍は十六世紀にほぼ消滅したが、思想としては生き残っている。通奏低音、地下水脈、間欠泉、古層、執拗低音、芯の部分として。だから何かがあると表面に突出する(表出する) なぜアメリカはあれほどイスラエルを支援するのか、どのような思想で日本に原爆を落としたのか、などの背景も窺い知れたように感じた。 2024/03/03