内容説明
仏留学生活を瑞々しく描いた著者デビュー作。
1950年、27歳の遠藤周作は文学研究のため、いち留学生としてフランスに渡る。
そこにはいまだ大戦の荒廃が色濃い日々の暮らしがあった。ナチスの残虐行為、肉欲、黒ミサ、サド、ジイド等々、ときに霧深いリヨンの街で、あるときは南仏の寂しい曠野で、人間の魂の暗部を擬視しながら綴った思索の足跡――。
愛とは、信仰とは? 本書は、戦後初の留学生として渡ったフランスでの学生生活について日本に書き送った原稿をまとめたエッセイ集であり、著者の原点ともいえるデビュー作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本命@ふまにたす
1
遠藤周作のデビューエッセイ。フランスでの学生生活を気ままに書いたものかと思いきや、後の作品につながるヘビーなテーマが出てきていて、読み応えを感じた。2020/07/23
たくみ
1
「そこはかとなく漂う寂寥感」と「ナルシシズム」との狭間に揺れる心情と言うべきものか。あるいは単なるホームシックか。後の「沈黙」や「海と毒薬」につながるテーマ性や独自性は早くも出ていて、まさに原点として興味深いものがある。2018/06/07
ももや
0
1950年から53年。著者27から29歳。華やかなパリではなく冬が長く陰鬱なリヨン。そして原野ボルドー。「沈黙」で描かれることになる「届かない祈り」の着想はすでにここにあったんだ。この後日本に帰った著者は、ヒヒじじいの格好をして女給の尻を撫でまわす、今の時代じゃ絶対アウトのエロオヤジとして大活躍するのだ。つくづく立派な人だ2019/04/05