内容説明
「この人は何でもわかっている。この人はすべてお見通しだ」。満州国の建国に携わり、東京裁判でA級戦犯として死刑に処せられた陸軍大臣・板垣征四郎。本書は彼の生涯と昭和前期の日本に光を当てる、壮大な試みである。諸民族が入り乱れた満州の地に、アジア人の五族協和・王道楽土を求めた石原莞爾の思いを汲み、自らは「不言実行」を貫いた板垣の生き様は、「この日本にしてこの人物あり」と思わせるものだ。時代や社会は個人とともにある。本書は興隆期にあった日本の力、品格、高潔さを体現する存在として、板垣と国家を重ね合わせている。さらに、著者は「日本がいかに強大であったか」という観点から、第二次世界大戦における「日本が勝利するチャンス」(歴史の仮説)をも提示する。それは当時の日本の国力と地政学に裏付けられたものであり、イデオロギーや虚仮威しとは無縁であることを記しておく。日本とともに戦った男の生涯が、開封される時が来た。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shincha
18
五族協和の理想を心の底から願いそれを実現するために満州国設立の立役者となった2人。歴史にIFはないが、石原莞爾や板垣征四郎の北進を当時の海軍が理解していたら、スターリンやレーニンの独裁による虐殺、毛沢東による中国人民の虐殺や文化外革命による虐殺、ポルポトや北朝鮮の悲劇なども起こらなかった可能性が高い。他の大東亜戦争を考察した本と違うのは、山本五十六と東条英機をヒーロー化せず、こき下ろしているところだ。日ロ戦争までの日本人のすごさと反対に昭和の陸軍の無能さ無謀さを書いた本が多い中、真実はここにありと感じる。2020/11/26
こまったまこ
8
板垣征四郎と石原莞爾について知りたくて手に取ったが、二人の話というよりも彼らを中心にして満州事変から戦後の軍事裁判までを総括的に広い視野で歴史の流れを辿る作品になっている。今まで自分が読んできた昭和史とは少し違う視点で面白かった。ノモンハン事件の実情や満州事変と支那事変は全く関連がないこと、独ソ戦の時に日本が北進していれば米は参戦の口実を失い米との戦争に発展しなかった、陸軍の仮想敵国はソで大陸で戦う訓練をしており海軍の南進策を徹底的に批判している、など興味深い内容だった。2016/02/27
rytryt
3
図書館で何気なく手に取ったのですが、良い刺激がありました。西尾幹二さんによる解説、『本書は、従来の歴史書と違って、時間的にも空間的にも著者の視野が長く広い範囲を見渡しつつ、叙述されているのが特徴です』。 例えば、『アメリカはなぜ日本を敵に回して戦争する気になったのか』。最後に序文から。『思索を重ねることによって、歴史から無限の教訓が得られる』。本書は私にとって、歴史発見の旅、またはその始まりかも、でした。 2023/03/04
チダ(uy1)
2
巻末の西尾氏の項にあるように、二人を題材にした満州事変から戦後の軍事裁判までという、この本の主人公は、歴史。2018/05/02
兵衛介
2
板垣征四郎を正当に評価しようという動機で書かれた本ということで読んでみたが期待はずれ。ノモンハン事件が実は日本の勝利であり日本軍は当時世界最強の軍隊であったという妄言が語られており程度が知れるであろう。2010/07/04