あなたは今、この文章を読んでいる。

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あなたは今、この文章を読んでいる。

  • ISBN:9784766421620

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内容説明

物語を、「作者」から「読者」へと受けわたす。円城塔、伊藤計劃、筒井康隆、辻原登、ジーン・ウルフ――。SF を中心にメタフィクション小説を鮮やかな手捌きで解体。読まれるたびに新たに生成する虚構形式「パラフィクション」を提言する。文芸評論を越えた衝撃的一書。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

35
一時席巻したメタフィクションという言葉は、マジックワード化しています。我々はメタの特権性に辟易していないだろうか。作中人物が虚構の自意識を持つことがメタフィクションですが、それは新たなレイヤーの作者の語りになります。ところが、フィクションにおける現在は、読者が読んでいるこの現在であると考えることもできる。作品は読者に読まれて、はじめて現前する。著者は、このメタ磁場を撒き戻していくことができるのがパラフィクションだといいます。メタフィクションを第Ⅰ部で、パラフィクションを第Ⅱ部で論じています。パラフィクショ2019/04/02

梟をめぐる読書

18
筒井康隆の短編中で直接参照されていたので、慌てて読了。いくら虚構の「虚構性」を言い立ててみせたところで結局は「作者」の特権性を強化してしまう「メタフィクション」(「わたしは今、この文章を書いている」)から、なにはともあれその文章を読んでいる「誰か」に寄り添おうとする「パラフィクション」(「あなたは今、この文章を読んでいる」)へ、というお話。後者の主軸として論じられるのが円城塔と伊藤計劃、といわれると「まあそうだよな」という感じだけど。現在、メタはすでに「ネタ」であり「ベタ」である、という問題意識には共感。2016/07/04

袖崎いたる

14
そもそも文書の存在は作者の想定こそ判を押したように当然だが肝心要な所では「読まれる」という契機が必要なのであり読者の存在は抜けず、もしその契機がなかったならその文書は実在しない。作者ばかりが偉いという違和感があれば、読者の方の権威を強化しようという向きにも違和感を持てる。そうした違和感の調停をメタフィクションの趣向でどうにかしようにも強調されるのは作者ばかり…と思いきや反撃の嚆矢も放たれたりするイエーガー。表現の実在が〈読者=他者〉を以て成るにも関わらず、〈作者=自己〉へとメタメタしててはアナクロニズム?2017/02/02

しゅん

12
メタフィクションが作者の絶対性を強め、豊かな読みの自由を奪う仕組みと化しているのに抗して、読者の「読んでいる」という意識に寄り添う「パラフィクション」を概念化しようと企んだ意欲的な一冊。特定のジャンルに関する分析のように見えるが、小説には常に「誰かが書いていて、誰かが読んでいる」という状況が潜んでいるのを考慮すれば、すべての小説、もしくはすべての文章の読みに関係する議論だ。『屍者の帝国』の物語内で流れる年月の指し示すものを考察する批評には唸った。2017/09/05

ももみず

12
アドベンチャーゲームブックってありますよね。「はい」を選ぶ→10ページへ進む、「いいえ」を選ぶ→15ページへ進むみたいにして、最終的にそれぞれの結末に至る本。パラフィクションって、それを小説という形式にまとめ上げたものかなと思いました。あれは能動的に読まれなければ成立し得ないから。私の愛する寺山修司は、『幸福論』の中で、「走りながら読む本を作りたい」と書いているけど、この能動性こそパラフィクションの本質なのでしょうか。あと、なぜかバークリ僧正の「存在するとは知覚されることだ」というお言葉を思い出しました。2015/01/21

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