内容説明
『高野聖』『歌行燈』など、幻想とロマンあふれる作品を多数世に送り出した泉鏡花(1873~1939年)は、今日でも人気の高い作家のひとりである。本書では、幻想の魔術師・鏡花の隠された別側面――百合と宝石のごとくいきいきと輝く豊穣な世界観を明らかにする。【著】者の女性的な視点と筆致の冴える珠玉の本格評論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井月 奎(いづき けい)
34
モチーフやテーマを定めて鏡花の作品の一面に光をあてる、そしてそれに沿った他の作家とのつながりや関りを見つけ出し、すこし鏡花を掘り下げています。泉鏡花をわかることはないでしょう。理解できる物語ではないのです。どれだけ感じることができるか、そこにあるきらめきを感じられるか、それを自らの心に見だすのが鏡花を読む醍醐味だと思います。死に永遠性を見ているこの作家は死のメタファー、百合であり宝玉であり、を好んで使い妙なる光と香りを発しています。少しわかりづらいところにあるそれを、この本はちらりと見せてくれます。2018/11/08
A.T
15
2年前、金沢へ旅行するに先立ちふと泉鏡花に触れたのがきっかけ。鏡花の文学は、現代の一見さんには敷居が高い。一足とびに幻想の世界へ入り込む。それがどこへなのか、なぜなのかー、この本の著者持田叙子さんが解説してくれます。さらに同時代の南方熊楠、師匠尾崎紅葉、三田文学水上瀧太郎との出会いなど、鏡花文学のバックボーンを知ることでやっとわかることがたくさんありました。2017/08/19
白露で秋草を釣る柊さん
9
何度も読んでる本です。泉鏡花が大好きなのは元々ですが、著者の言葉は読者を鏡花の世界に引きずり込むような魅力?魔力?を持ってる。鏡花に興味ある方は一読の価値あると思う本。2014/03/14
miloumogu
1
鏡花が幼少期に生家の近所にある「森八」のお菓子を母と食べた経験が小説の性愛描写のモチーフにつながっていたり、越前の湿った風土があのイギリス湖沼地方と並べられていたりして、地元なのにまったく実感がわかないのだが、この実感のなさが作品の普遍性や壮大さ、そして幻想性を物語るのかな、とも。2013/03/24
BieAch
0
泉鏡花についてより知りたくて図書館にて借りた。各テーマごとに丁寧に泉鏡花が参照されており、説得力も高いものだった。勿論ここから逃れる読みもあるだろうが、積極的に理解したい視点が多かった。2022/08/27