内容説明
堺町通松原下ル鍛冶屋町。家々の並びにぽっかり口をあけた露地の奥、「鉄輪の井戸」の脇に、その店はひっそりと佇んでいた。百年は経とうかという町家カフェの女主人キリとの出会いが、私を古都にうごめく様々な怪異へと誘ってゆく。切るに切れない「縁」をテーマに、京都エッセイの第一人者が綴る、美しくも怖い「京都小説」。裏京都案内とも言える著者解題を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
58
都市を舞台にした怪談は、そこのゲニウス=ロキと密接に絡み合っているような気がする。東京ならば『東京伝説』的な渇いた狂気、大阪ならば関西弁を思わせるような滑り。本書は京都らしく縁を主題にした怪談集であるが、一風変わっているのはその縁を切る話ばかりである事。そう考えれば京都って地縁とか風習とかでみっしりと絡み取られている気がするなあ。本書ではその縁に絡みつかれて、非日常に誘い込まれる事になるけど。ただ一番気に入ってるのは、一番怪談らしくないけど子供の頃の浮き立つような非日常を彷彿とさせる「おばけ」だけれども。2017/04/06
ひょろ
4
半分くらいは異形コレクションで読んでいたけど、書下ろしで鉄輪の絵の秘密がわかる。さいごの「おばけ」は掲載誌が違うのでホラー要素少なめ。なくなってしまった習慣だけどありありと甦ってくる。2018/05/19
Spok
3
はんなりと語られる話がグロい 京都弁がやたらと恐ろしさをましよかった 修羅霊、金繍忌が特によかった2020/07/24
あいちょ。
2
図書館。 鉄輪の井戸の脇にあるカフェの女主人キリ。 2019/09/23
のん
2
これを映像化したら相当気持ち悪いだろうねという描写があるのですが(絶対見たくない)、全体の文章が美しいからか全く恐怖はなく。妖しいのに現実にありそうで、著者解題とともに京都案内としても楽しめました。人と人を手繰りよせるご縁が「最後まで信じられる真実」でご縁ほど「ややこしいもん」は他にない…わかる気がします。さて、京都に行ってみましょうか。2017/06/29