内容説明
十二世紀ルネサンスの代表的な知識人、「ソールズベリのジョン」の全体像を明らかにする我が国初の書。教会人にして宮廷官僚も勤めた彼の思想を、「中世の春」と称される時代の状況を背景として論じる。「中世における最初の暴君殺害容認者」との通説のあるジョンが、実は徳の涵養、中庸の精神、あるべき君主像を説いた人であることを、体系的に解明していく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
belier
1
12世紀の人文主義者ソールズベリのジョンの政治思想。君主の鑑、中庸の精神、キケロの影響、両剣論、暴君殺害論など。政治思想史の入門書でも飛ばされてしまう時代の人なので、この本の著者の別の著作で知った。いつもながら著者は明晰な文章で解説してくれるので、この全く未知であった人の思想について親しむことが出来た。12世紀英国の王位を巡る醜悪な権力の奪い合いを身近で見て君主の理想を説いた人。キリスト教的な考えだけでなくキケロなどギリシア・ローマの思想も織り込む。思っていたより12世紀の西洋思想は近代と異質ではない。2017/02/18