内容説明
子どもたちと手まりをついて遊ぶお坊さん――として、今なお多くの日本人から愛され続けている良寛。どん底の立場から世の中を見据えた清貧な乞食僧は、漢詩と和歌を愛し、亡くなる直前まで「こころの言語化」という精神活動を深めた表現者でもあった。厳しい競争と経済至上の社会のなかで「自分」というものを見失いがちな今日、みずからの姿でもって「人間の座標軸」を示そうとした良寛の生きざまを見る。
[内容]
はじめに 「どん底目線」と「徹底した言語化」
第1章 ありのままの自己を見つめて
第2章 清貧に生きる
第3章 「人」や「自然」と心を通わす
第4章 「老い」と「死」に向き合う
ブックス特別章 良寛さんの仏教理解
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
きみたけ
62
NHK出版の100分de名著より良寛詩歌集をチョイス。今年の定期演奏会で良寛と貞心尼を題材にした合唱曲に取り組んでおり、基礎知識として良寛の生き方・考え方を知るために読んでみました。子どもたちと手まりをついたりかくれんぼしたり、どこかフワッとしたイメージのある良寛ですが、弱者に寄り添う立場から世の中を見据えた乞食僧として、「どん底目線」で人間の座標軸を示そうとした生きざまを漢詩と和歌の目線から追いかけています。生きるために立場や地位を求めることには興味を抱かない境地、今後見習いたいと思いました。2023/08/03
らる
5
良寛の特徴は「どん底目線」から目指した「悟り」、漢詩・和歌を用いた「徹底した言語化」である/社会の矛盾に気づき「自分の求めている世界」を求めて思い切った行動に踏み出した/「乞食は三日やったらやめられない」社会から完全に逸脱すると、不思議と気持ちが解放される/他人の気になる行動を見てもそれを直接注意はせず、自らの教訓とする/誰とも比べず、自身を拠り所にして生きるからこそ心穏やかでいられる/求めるように祈るのではなく、感謝するように祈る/「知る」とは「なる」こと。体験してはじめて知ることができる2021/12/12
ミー子
3
良寛さんの人柄や学識の深さが感じられる良書。飄々とした生き方に見えるが、それは仏教経典や古典文学への深い学識に裏打ちされてのものだったんだと思う。良寛さんは、寺という財産やしがらみを持たないことを選び、仏教僧としての本当の生き方をした人だと感じた。2022/03/21
6haramitsu
1
良寛さんの苦悩/苦労の人生が分かる。良寛さんの涙の逸話が好きで読んでみた。それは本当に一部であって、「The清貧」という人生。乞食で何年も旅をするって一体どんな感覚なんだろうか。全て捨てて手放していくんだろうな、命だけ持ってという感じなのだろうか。自分も一度お遍路やってみよかな。。。自分が変わるだろうな。親鸞も山田恵諦猊下も言っているが徹底的に自己を小さくする、どん底目線。自然やこの世の成り行きすべてが仏のお手配と観る。在家では無理かもしれないが、ちょっとでも真似して生きたい。2025/08/24
まのん
1
昼行燈の子供時代や晩年の姿はよく取り上げられるが、良寛さんのお寺での修業時代、酒好き、乞食旅での姿が詳しく書かれていて興味深かった。 生涯身を立つるに慵(ものう)く、騰騰、天真に任す。 嚢中、三升の米、炉辺一束の薪。 誰か問はん迷悟の跡、何ぞ知らん名利の塵。 夜雨草庵の裡、双脚等閑に伸ばす。 詩や歌を通して物事の本質を見つめ続けた良寛さんの姿を「どん底目線」と「徹底した言語化」として本書では表現している。 2017年初版の本ですが、このころからSNS等でよく聞く“言語化”という概念があったのか。 2025/04/20




