岩波科学ライブラリー サイボーグ昆虫，フェロモンを追う

著者名：神崎亮平

岩波書店（2017/05発売）

• ISBN：9784000296281

内容説明

数キロ離れた所から漂うフェロモンの匂いを頼りにメスを見つけ出すオスのカイコガ．米粒ほどの小さな脳でありながら，優れたセンサと巧みな行動戦略で，工学者に解けなかった難題をこなす．そんな昆虫脳のはたらきが，ひとつひとつのニューロンをコンピュータ上にモデル化し，シミュレーションすることで明らかになってきた．

目次

目　　次

　はじめに──脳を理解する近道、それが昆虫だ

　１　昆虫はすごい
　　　地球は昆虫の惑星／昆虫の感覚能力／ゴキブリはどうして素早く逃げられる？／小さな脳で優れた適応力を発揮
　２　動物によって異なる環境世界
　　　環境世界／感覚の世界／複眼／視力／見える色／偏光／時間の世界／大きさの世界／異なる環境世界を知るために計測装置を使う
　３　どうやってフェロモン源を見つけ出すのか
　　　フェロモン／匂い源の探索は超難問／匂い源を探索するための行動戦略／反射とプログラム行動／行動戦略は状況に応じて変化する／カイコガが操縦するロボット／昆虫操縦型ロボットでカイコガの適応能力を調べる
　４　昆虫の体はセンサだらけ
　　　昆虫の鼻／昆虫の一般臭の受容体の遺伝子／昆虫のフェロモン受容体の遺伝子／サイズを生かした感覚器と脳の設計
　５　脳をつくってロボットを動かす
　　　昆虫の神経系／胸だけあれば羽ばたける／昆虫の脳をつくるモジュール／昆虫のニューロン／ニューロン１つにガラス微小電極を刺す／光らせてニューロンを調べる／光がフェロモン刺激の代わりになる！／ニューロンデータベース／匂い源探索行動をおこす神経経路／直進、ジグザグターン、回転を指令するニューロン／前運動中枢の構造／86個のニューロンで前運動中枢の神経回路を再現する／まずは領域間のつながりと結合強度を推定する／標準脳を用いた精密な神経回路モデル／標準脳／標準脳につくった神経回路を「京」スーパーコンピュータで動かす／神経回路モデルで動くロボット／適応的な行動を生みだす神経回路モデルへ
　６　サイボーグ昆虫
　　　 「サイボーグ昆虫」誕生／サイボーグ昆虫の意味／脳の機能を理解し、予測し、操作する未来へ
　おわりに
　　　もっと詳しく知りたい人へ
　　　謝辞

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[calaf]

脳のシミュレーションやサイボーグ...昆虫を使えば可能な領域になってきているらしい...ただただ驚くばかりの本でした。

2014/09/04

[鯖]

ホントは人間の脳を再現したいけど、倫理的技術的に問題があるから、まずは昆虫のそれをスパコンで再現してみようね～という研究に邁進する著者の書。トンボの複眼の視力を人に置き換えると頭上に１ｍの大きさのミラーボールみたいな目玉が載ることになるらしい。SF感が全体的に強かったけれど、最初に「ｱｯこれは京極なっちゃんの魍魎の筺だ！！」となってしまい、なっちゃんすげえや…とそっちに全振りしてしまった。脳の代わりのスパコンも臓器のかわりのみっしりほうも、生き物の緻密さというか奇跡に驚き、生の凄みに恐れ戦くのであった。

2018/09/01

[かっこちゃん]

昆虫は凄い。ところどころヒイェーと内容に今更ながら感心し、研究や実験のやり方にビックリ。でも地道なこんな研究が医学等の進化の必要不可欠なんだろう。でも、基本的興味の薄い分野です。詳しい説明に入ると斜め読みしました。ごめんなさい。

2021/01/13

[テイネハイランド]

図書館本。著者は、東大先端研の教授。最新の遺伝子操作技術によりフェロモンに代わり光の刺激で反応するカイコガを作れたり、頭のみを利用し体を機械で置き換えたサイボーグ昆虫をつくってみたり、その研究内容の面白さにわくわくした。また、比較的単純なカイコガの場合でも脳の働きを完全にシミュレートするのはブレイクスルーが必要なことも述べられており興味深い。ページ数の制約のためか、ニューロン信号のフリップフロップ応答の説明など、文章中で理解しづらい個所があるのが残念であり、この点を修正した本の執筆が期待されるところ。

2015/09/19

[クサバナリスト]

サイボーグ昆虫そのものより、まずはカイコガは切っても胸部だけでも動くことに驚いた。でも、この体があるからこそ、他の生物では出来ない、こうしたサイボーグ実検が可能となるのか！

2014/10/26